国内市場で輸入車の普及が進んでいる。これに応じ、輸入車の整備需要も拡大している。輸入車を積極的に受け入れている整備工場は技術力のアピールになり、「輸入車が輸入車を呼び込む」効果が見込める。新たな集客につながるメリットがある一方、サービス情報の入手や部品の調達など、輸入車特有のノウハウも求められるのが実情。こうした課題を克服していけば、取り組みの輪がさらに広がりそうだ。
2021年3月末の輸入車の保有台数は412万7721台となり、10年前に比べて約84万台も増加した。輸入車は高級車だけではなく、値頃なコンパクトクラスの品ぞろえが増えている。それらが中古車として出回っていることも、輸入車のユーザーの広がりにつながっている一因だ。
増える輸入車の安全性を保つためには、対応できる整備事業者の存在が不可欠になる。正規輸入車のメンテナンスは、初回車検まで系列ディーラーへの入庫率が高い。しかし、その後はディーラーから徐々に離れる傾向にある。
日本輸入車整備推進協会(JISPA、平林潔代表理事)は、各インポーターの系列ディーラーのアフターサービス受け入れ能力を「6割程度が上限と見ている」という。残り4割近くの車両は独立系の整備事業者が、整備を担っていく必要がある。輸入車が日本市場で持続的に発展していくためには、こうした工場でも輸入車に対応したインフラを整えていく必要がある。ただ、通常の車検や点検を含め、いざトラブルが発生した時に必須となるサービス情報の入手が課題となっている。
日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)が提供する整備情報提供システム「ファイネス」には、輸入車のサービスマニュアルはほとんど掲載されていない。輸入車の整備を手掛けてきた事業者はこれまで、海外の文献などを活用するなどしてサービスの技術情報などを入手してきた。しかし、近年は専用スキャンツール(外部故障診断機)を介してオンラインでのみデータ提供が行われており、各輸入車メーカーに利用料を支払わないとデータにアクセスできない状況にある。
輸入車も高機能化が加速する中で、JISPAの白柳孝夫事務局長は「一般の整備工場では対応できない事例が増える」と懸念する。サービスデータの問題に対しては「ディーラー(インポーター)との協力関係を大事にする」(白柳事務局長)などの対処法を探り、ユーザーへのフォローを継続していく考えだ。
JISPAの会員工場である協和自動車(東京都中央区)の島倉昌司常務は「中古で輸入車を買うユーザーにとっては、ディーラーは敷居が高い」と見ている。また、正規ディーラーがない地方都市も全国各地に点在していることから、専業者が輸入車整備に着手する意義も強調する。輸入車整備へ対応することで、他の工場との差別化できれば、さらに多くの専業者への広がりも期待できそうだ。
月刊「整備戦略」2022年10月号で特集「輸入車整備で活路を!」を掲載します。