整備工場は車検、点検の入庫からタイヤ交換を訴求できる

 整備事業者が補修部品を積極的に販売していくことは、車検偏重の収益構造から脱却を目指す上でも重要な施策といえる。中でもタイヤとバッテリーは、定期的に交換が必要な高単価商品であり、取り組むメリットは大きい。昨今は車の進化にあわせて商品特性が変わっており、商品選びにもしっかりとした知識が求められている。整備工場では点検、車検の入庫時に部品の状態を把握し、適切に交換をユーザーに促進できる。このため、補修部品のメーカー側も整備事業者の取り組みに注目している。

 タイヤは重要保安部品であり、さまざまな業種で取り扱っている。しかし、近年はユーザーの意識の低下によりメンテナンスが放置されがちなため、車検や点検の機会をとらえて、交換をしっかり訴求することが求められている。この背景の一つにはガソリンスタンドの多くがセルフ化し、来店時に点検や交換を呼びかける活動が減っている状況がある。あわせて「以前よりも車に興味を持った人が20~30代の若者を中心に減っている」(タイヤメーカー担当者)ことも要因となっている。

 タイヤメーカーでは整備工場の系列ショップを通じて、車検や点検時の呼びかけを加速している。さらに、ブリヂストンでは「ちゃんと買い」と称し、新車に装着されている一定グレード以上のタイヤ選びを提案する活動も進めている。横浜ゴムでも車の特性やユーザーの使い方に応じたタイヤ選びを支援している。タイヤに関するユーザーの意識が低下すれば、価格重視でタイヤが選ばれがちになる。ユーザーに適したタイヤを正しいタイミングで交換を促していく活動の担い手として整備事業者への期待は高く、タイヤメーカーも有力な販売チャンネルとして位置付けている。

 一方、補修用の鉛バッテリーもユーザーの交換意識は低いのが実情だ。日本自動車連盟(JAF)によるロードサービスの出動理由の1位が長年「バッテリー上がり」であることからも分かる。この実態から、整備事業者は入庫時にバッテリーの定期点検を促すこと、一定以上の使用年数が経過したものは早めの交換を勧めることなどの啓発活動が重要とされている。

 バッテリーの選択でも、近年は車両の進化に応じて仕様が変わり複雑になっている。充電制御車用、アイドリングストップシステム(ISS)用、ハイブリッド車補機用など複数のタイプが存在し、さらに欧州の「EN」規格バッテリーが欧州車や国産車の一部に採用されるなど、よりバラエティーに富んだ構成となっている。また、交換作業も車種ごとに定められた手順に沿って行う必要があり、整備技術を有する整備工場がバッテリーを取り扱う優位性をさらに打ち出すことも可能とみられる。

 月刊「整備戦略」2022年8月号で特集「今こそタイヤ、バッテリー販売」を掲載します。