中古車大型展示場に併設されたサービス工場(ガリバー宮崎港店)

 自動車の整備は、さまざまな業種が手掛けており、業態も幅広くなっている。車検事業だけをみても、事業者の立地のほか、整備や検査にかかる時間、予約方法など一様ではない。近年はデジタル技術の導入拡大などを受け、利便性を追求した営業展開、効率的な事業運営を目指す動きが業界全体で見られている。

 中古車の買い取り・販売店「ガリバー」を展開するイドムは、整備工場を併設した店舗の拡大に乗り出している。23年からの中期経営計画で大型店舗を5年間で80店舗体制とする方針だが、ここに整備工場を設けていく。店舗で整備を含めたアフターサービスのメニューを迅速に提供できるようにすることで、顧客満足の向上につなげる。

 店舗との併設工場は11月末までに20工場を開設。設備もアライメントテスターなど最新の整備機器を導入しているほか、サービス利用者専用のラウンジを設けるなど、付加価値を高めている。工場をガラス張りにする設計も取り入れ、利用者の安心感も高めている。そのほか、ボディーコーティングなどを作業するカーケア棟の設置に加え、各都道府県に1店舗以上、板金塗装工場の併設店を設けるなど、さらなる整備機能の拡充にも取り組む。

 イドムアフターサービス事業部の開隆行チームリーダーは「整備事業の収益基盤となる顧客数は増えている」とした上で、「車の販売も伸ばせ、会社の成長につながっている」とし、今後も体制強化を進める考えだ。

 集客力のある商業施設に併設した業態も、整備業の新たなスタイルとして浮上している。ホームセンターのジョイフル本田に併設した車検事業を展開するのが、「オートイン車検・タイヤセンター」だ。もともと同ホームセンターのグループ会社が13年から展開していたが、21年にオートバックスセブンが全株式を取得し、子会社化した。

 同店は主にホームセンターの客層をターゲットとしているため、オートバックスの車検利用客と比べて女性比率が高い。顧客層や商圏も広範囲に設定できる。オートイン車検・タイヤセンターを運営するバックスブーツ(川崎博社長、千葉県印西市)の北川幸弘会長は「車検は短時間で済むとはいえ、ユーザーにとってはあまり時間を取られたくないこと。それを買い物で楽しんでいる間に済ませられることは大きなメリットになる」と捉えている。カー用品店の利用客とは異なる層に対しても、サービスを訴求できる業態の強みを最大限に活用し、更なる成長を目指す。

 インターネットによる車検の事前見積もりや予約サービスも普及している。この一つが、楽天グループが運営する「楽天Car(カー)車検」だ。楽天のプラットフォームを介して参画店舗の利用を促すビジネスモデルとなり、楽天が抱える膨大なデータや顧客ニーズを事業者へフィードバックする。整備入庫の拡大に役立つシステムとして活用を促している。また、事業者へのコンサルティングや、デジタルトランスフォーメーション(DX)のサポートも行っており、システムのさらなる機能拡張にも力を入れる計画だ。

 整備業は地域密着型ビジネスの代表格とも言えるが、時代の変化を受けてユーザーニーズが多様化している。整備事業者ではウェブサイトを窓口にしたり、ライフスタイルに合わせた商品を提供したり、さまざまな取り組みを行っている。これらの新たな潮流が今後、どこまでスタンダードになっていくのか、どんな変化を業界にもたらすのかも注目が集まっている。

 ◆月刊「整備戦略」2023年1月号で特集「整備業態の新たな潮流」を掲載します。