今月スタートした電子車検証(サンプル)

 2023年の整備業界は法制度の改正や新技術への対応など、さまざまな環境変化への対応に追われそうだ。行政手続きでは、デジタル変革が一層進む。自動車検査証の電子化(電子車検証)に加え、軽自動車の新規届け出時における自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)が今月スタート。運輸支局の窓口やOSS申請時の自動車重量税と検査登録手数料の支払い方法にクレジットカードも追加された。特に、ICタグ上の有効期限などの情報を書き換え可能な電子車検証は、整備事業者やユーザーの利便性向上につながるものとして期待が高まっている。

 整備にかかわるデジタル施策の中でも、電子車検証は目玉となっている。「A4」判だった従来の紙の車検証に比べ、「A6」判相当のサイズと大幅にコンパクト化を実現。表面には登録番号や車台番号など必要最小限の記載事項を印字し、このほかの情報は内蔵したICタグに記録する。これにより、継続検査を受検した際、有効期限などの更新もICタグを書き換えるだけで済む。紙の車検証を都度発行する手間がなくなることから、整備事業者が運輸支局への来訪頻度を減らすことができる。

 ICタグの記録更新や検査標章の印刷など、電子車検証で新たに発生する事務手続きは、国が一定の要件を備えた自動車販売会社や整備事業者などに委託する。今年は各運輸支局で電子車検証への切り替え作業が中心となるとみられ、整備の現場での書き換え作業は来年以降、本格化する見通し。車検証の取り扱いが大きく変わることから、国土交通省では電子車検証の導入に合わせ、ユーザーや自動車関連事業者向けの情報発信サイトを開設。制度や手続きを紹介し、円滑に対応できるよう促していく。

 また、整備業界では24年10月に、車検時の車載式故障診断装置(OBD)検査の開始が控えている。これに向け、23年度中には関連システムのリリースや試験的な運用が始まる見込み。整備事業者はこれからの1~2年、それらの制度変更に伴う対応が慌ただしくなるだろう。

 一方、先進運転支援システム(ADAS)の普及などによって、20年4月に施行された特定整備認証。これを取得しなければADAS搭載車の整備は行えなくなるが、この経過措置の期間が残り1年2カ月に迫っている。しかし、認証取得件数は22年末で約4万件と、認証工場全体の半数以下の割合にとどまる。当初、業界内では、全体の取得率は7~9割になるとの見通しがあった。仮にそこまで件数が増えるとなれば、駆け込み申請の発生が予想される。だが、足元の取得ペースは鈍化しており、「このままの推移で落ち着くのでは」(整備団体役員)との見方も出ている。特定整備の認証を取得しても、エーミング(機能調整)作業など電子制御装置整備への対応は一筋縄ではいかないことから、二の足を踏む事業者があると想定される。

 こうした実情を受け、今後活発になるとみられるのが「地域連携」だ。同じエリア同士の事業者が、互いの得意分野で助け合う枠組みとして注目されている。具体的には一般整備や車検などは従来通り事業者間で競争するが、スキルや多くの設備が必要になる電子制御装置整備では協調して対処していく。すでに業界団体や民間企業などが垣根を越えた連携に動き出しており、経過措置終了後の24年4月以降には、さらに連携の輪が広がるとみられる。

 ◆月刊「整備戦略」2023年2月号で特集「2023年を占う」を掲載します。