EVなどの普及にはレアメタルを安定確保できる体制構築が不可欠

 政府は今年、電動車支援を加速する。電気自動車(EV)などクリーンエネルギ―自動車(CEV)の補助金として1200億円規模の予算を充てる方針だ。電池材料となる重要物資の確保にも取り組み、EVで先行する中国や欧州を追撃する。

 経済産業省は、2023年度当初予算として、CEVの購入補助金として200億円、インフラ導入補助金として100億円の計300億円を計上した。22年度2次補正分と合わせると、CEV関連の予算は1200億円と過去最大規模になる。

 22年は日産自動車や三菱自動車の新型軽EVの販売好調で、夏頃からCEV補助金の予算切れが懸念されていた。政府は、12月に成立した22年度の2次補正予算で700億円の追加財源を確保。予算案が閣議決定した22年11月8日を基準とし、補助金を支給している。当初予算でもCEV補助金の財源を確保することで、引き続きEV販売を後押ししていく考えだ。

 また、経産省は22年に「蓄電池産業戦略」の最終取りまとめも公表。同戦略では、液系リチウムイオン電池(LIB)の国内製造基盤として遅くとも30年までに年間150㌐㍗時を確立し、グローバル市場では30年に日本の企業の製造能力で同600㌐㍗時を確保するとした。さらに次世代電池市場の獲得に向け、30年頃の全固体電池の本格実用化と30年以降の技術リーダーの地位の維持・確保を目標に掲げた。

 この目標を実現するには、リチウムやニッケルのほか、コバルト6万㌧、黒鉛60万㌧、マンガン5万㌧を確保する必要がある。この確保のために、今後5年間で官民合わせて2兆2千億円規模の投資が必要になる見込み。鉱山権益の確保に加え、供給網の中流の製錬工程を国内や有志国内に整備することも目指す。

 現在のEVの車体価格の3分の1は電池コストが占めると言われている。レアメタルを安定して確保できる体制を構築できなければ電池価格が下がらず、EV販売に影響を及ぼす可能性も出てくる。官民が一体となり、上流資源の確保に取り組んでいく考えだ。