「車屋さんがあって良かった」を目指すヤマモト自工
山本義裕代表取締役

 板金塗装(BP)と車両販売を中心に事業展開するヤマモト自工(山本義裕社長、石川県中能登町)は、ロードサービス(RS)業の展開や、中能登町と災害協定を締結するなどで、地域密着型の経営にまい進する。

 RS業はBP主軸の下請け依存からの脱却を目指し、10年前に積載車1台からスタートした。現在は積載車とレッカー車を合わせて7台まで増車し、月間100件ほどの要請に対応している。「ロードサービス業は当社の名前を知ってもらい、入庫につなげる役割も担う」(山本社長)。実際に入庫客から「数年前に助けてもらった」などの声を聞く機会も少なくないという。高齢化が進み、自動車への依存が強い地域性に対応した取り組みだ。

 「地域、社会への貢献があってこその企業であり、社員もより目的意識を持って働くことができる」(同)と話す。この一貫として、中能登町と災害協定を結び、有事の際は車の専門知識を提供するほか、レッカー車や積載車の出動など、機材面も含めた支援体制を整える。同社が培った自動車領域での知見を生かして地域に貢献したいという思いから、同町に提案し実現した。

 RS業をきっかけにリピーター入庫客も増加し、BPと車販事業を拡大させてきた。2019年には、本社屋と新工場の新築移転を実現。車販台数の伸長に伴う車検整備需要拡大に対応するため、指定工場の認証取得も予定している。

 一方、人材確保にも力を入れる。整備士が入庫客から直接感謝の声が聞けるような機会を創出するなど、「整備士の面白さや魅力を伝えていきたい」(同)と話す。地元の小学生に、整備工場での仕事について紹介し、整備業を身近に感じてもらい、関心を持ってもらえるような活動にも注力している。

 また、BP工場だからこそ、初回車検を迎える前の新型車両がいち早く入庫してくることを見据え、エーミングも含めた最新の設備をそろえる。

 今後は、高齢化が加速する地方の課題である介護や福祉の分野にも取り組みたい考えだ。福祉車両での送迎や、車両の点検整備で町と提携するなど、地域に貢献できる体制を整えていく。

 〈受賞者コメント〉

 山本義裕代表取締役

 取り組みに着目するという趣旨のアワードに選ばれたことは、大変うれしい。今後、さらなるアワードの知名度向上を見据え、第1回受賞事業者としてより一層努力していきたい。

 地域住民に安心安全を提供し、この町に車屋さんがあって良かったと思ってもらえる、周辺地域から必要とされる地元に根付いた工場を目指して、企業づくりに取り組んでいきたい。

(下岸 可憐)

ー連載おわりー