カーボンナノチューブ電線

古河電気工業傘下の古河ASは、カーボンナノチューブを使用した車載用ワイヤーハーネスを早ければ2030年にも実用化する。実用化すれば業界初。次世代車が普及する中、アルミよりさらに軽量で、電気抵抗の低減が期待できる材料開発に乗り出す。

現在では、電気自動車(EV)など向けで、車両の軽量化を目的にアルミハーネスの採用が進んでいる。アルミは銅に比べて導電率が劣るものの、比重は約3分の1と車両の軽量化に効果がある。同社製品においても、特に欧州向けに需要が拡大しており、25年には自動車メーカー8社100車種への採用が決定している。

同社のアルミハーネスはアルミ比率が約4割。さらなる軽量化にはアルミの比率を高めることが必要になるが、「コスト的に4割が限界」(阿部茂信社長)という。アルミハーネスは主にバッテリー周りなどパワー回路向けに使われており、データ通信部分などでは従来の銅合金製のハーネスが使われている。このため銅合金製のハーネスの軽量化を進めることで、車両の軽量化に貢献する考えだ。

一方で、欧州では2030年にもEVシフトが本格化すると見込まれる。同社は、車両重量がかさむEV向けに、さらなる軽量化が期待できる新材料を使用したハーネスを開発する。

カーボンナノチューブは、炭素のみで構成される直径がナノメートルサイズの円筒状の物質。銅と比べて約5分の1の比重であり、温度による電気抵抗への影響が小さいといった特徴がある。ワイヤーハーネスに応用することで軽量化や小型化、耐腐食性の向上が期待できるという。

同時に、カーボンナノチューブを使用し、モーター内のコイルの巻き線を開発する。すでに、技術的な目途は立っており、こちらも早ければ30年にも実用化する考えだ。