2021年もサプライヤーによる不正が相次いで明るみとなった。日立アステモや三菱電機といった日本を代表する自動車部品メーカーで長年に渡って不正が行われていたという事実は、高い品質が強みである「日本のものづくり」の根幹を揺るがしかねない事態ともいえそうだ。
三菱電機は、10月に開いた一連の不正検査などに関する会見で、漆間啓社長と引責辞任した柵山正樹前会長が謝罪し発生の経緯を説明した。ところが12月には新たに鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)で製造しているETC(自動料金収受システム)設備の製品試験でも不正を行っていたことが発覚。次から次へと不正が発覚する異常事態となっている。
これを受けて12月末に開いた会見で漆間社長は「ここでしっかりと対策をとっていくことが私の責務だと考えている」と語り、過去の問題を精算し、新たな成長へと進めていきたい考えを示した。
ただ、調査委員会が行った調査では、各社員から調査委員会宛てに直接送付することにしていたアンケートについて、一部の上司がアンケート回答を会社に提出するように指示していたことが発覚。一連の問題が発覚した後も依然としてこのような行為が横行しており、企業体質の改善への道のりは相当険しいと言わざるを得ない状況だ。
日立アステモでは、ブレーキ構成部品とサスペンション構成部品について、定められた定期試験を実施していない不正や、自動車メーカーへ偽ったデータを記載した報告書を提出するといった不正行為が判明した。一部製品では20年以上に渡り不正行為が続いていた。同社は、日立製作所の子会社である日立オートモティブシステムズと、ホンダ系部品メーカーのケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して誕生した日本でも有数の大手サプライヤーだけに、今回の長年続いていた不正の発覚は業界内での衝撃も大きかった。
相次ぐ不正発覚を受けて、古河電気工業の小林敬一社長は「対岸の火事とは考えていない」と話す。古河電工も過去に不正問題があり、苦い経験を持つ。「(問題が発覚した)2008年以降、他社の様々な話がおきると必ず(社内を)チェックするようにしている」とし、過去の経験を風化させない取り組みに力を入れている。
自動車業界では、ここ数年で検査にまつわる不正事案が相次いで確認されてきた。各社とも不正問題に対しては敏感になっており、自社でも同様の事案がないか神経をとがらせてきた。それでも新たな不正事案が発覚してしまうのが実情だ。
自動車産業には、長年蓄積した技術力やノウハウなどの歴史や財産がある。それゆえに、過去のしがらみや自信、社内での常識や当たり前といったものを覆すのは容易ではない。2021年は歴史ある製造業の難しさを改めて痛感させられる年となった。