三菱電機は一連の品質・検査不正問題で、新たにETC(自動料金収受システム)設備の製品試験で不正を行っていたことが分かった。一部の試験で、顧客との間で全数検査を実施する契約を締結していたにも関わらず、全数を試験したかのような虚偽の結果を提出していた。社外の弁護士で構成する調査委員会(木目田裕委員長)が23日に発表した調査報告書(第2報)で判明した。
ETC設備は、鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)で製造している。調査報告書によると、2011年11月~19年11月までに受注した合計30件が対象という。16~18年度にかけて実施された点検では、今回の品質不正は明らかになっていなかった。同社は「顧客に状況を説明し、今後の対応について協議中」としている。
また、調査委員会の調査では全従業員を対象にアンケートを実施した。各社員から調査委員会宛てに直接送付することにしていたが、一部の上司がアンケート回答を会社に提出するように指示していたという。調査委員会は「『ものが言えない風土』は依然として根強く残っている」と指摘し、一部で問題発覚後も悪しき慣習が続いていた。
このほか、内部統制システムやガバナンス体制の改善点などを検証するガバナンスレビュー委員会(山口利昭委員長)が検証結果(第1報)を公表し、歴代社長を含め14人の役員の経営責任を承認、取締役会と報酬委員会でこのうち12人に対する処分を決めた。現役役員には報酬の減額、退任した役員に対しては役員報酬の自主返納を要請する。同委員会は22年3月をめどに検証結果の報告と改善策を提言する予定だが、今後新たな問題が発覚した際には改めて検証し、結果を踏まえて対応していく。
本社で行った記者会見で、漆間啓社長は「ここでしっかりと対策をとっていくことが私の責務だと考えている」と述べ、引責辞任については否定した。