ロバート・ボッシュは、SiC(炭化ケイ素)を用いたパワー半導体の量産を12月から始めたと発表した。単独のチップとして提供するほか、パワーエレクトロニクスやeアクスルなど製品に組み込んだ形で供給する。製造は独ロイトリンゲン工場で行う。

 同社は2019年にSiCチップを開発し、生産すると発表。製造工程を自社開発し、21年初頭から評価用サンプルとして生産を始めた。今回、ロイトリンゲン工場での量産を12月から開始。自動車の電動化に伴う旺盛なパワー半導体需要に対応するため、将来的には生産能力を億単位の規模に引き上げる予定となっている。

 同工場ではすでにクリーンルームスペースの増設に入っている。今年は1千平方㍍を増設。23年末までに3千平方㍍を追加する予定だ。これにあわせて第2世代のSiCチップの開発も進めており、22年にも量産を始める。将来的に200㍉㍍ウエハーを用いた半導体生産も予定している。

 SiC半導体は電気自動車(EV)の航続距離の延長や充電の高速化に寄与する。現在のシリコン(ケイ素)チップに比べ、航続距離は平均6%延長できるとみられている。また、熱の発生も大幅に抑えられるため、パワーエレクトロニクスの冷却機構の簡略につながるメリットもある。

 ボッシュは量産を始めたSiCパワー半導体について、単独のチップとして、またモーターとトランスミッション、インバーターを一体化したeアクスルなどに組み込んで提供する。