半導体の供給不足は自動車産業の供給網に新たな課題を突き付けた

 自動車生産に必要な半導体の世界的な供給不足は、震災などを経て強じんになったはずのグローバルサプライチェーン(供給網)に新たな課題を突きつけた。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)で自動車が進化する一方、供給元が限られる部品や素材は他産業との奪い合いになる可能性が出てきたからだ。今後は災害や通商だけでなく、こうした調達リスクへの対応を迫られそうだ。

 半導体不足による自動車生産への影響度合いには濃淡がある。ホンダは軽自動車「N」シリーズや小型車「フィット」を生産する鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の稼働を2月に5日間停止する。マツダは2月に世界で約7千台の減産を前提に生産計画を見直す。トヨタ自動車は米国で生産する「タンドラ」や欧州の「ヤリス」の生産などに支障が出た。

 各社ともコロナ禍のような操業停止には至っていないが「日々状況が変化している」(三菱自動車の長岡宏代表執行役Co―COO)とし、調達状況を確認しながら不安定な生産が続く。

 半導体不足には複数の要因が重なった。5G(第5世代移動通信)対応スマートフォンやゲーム機など民生用の引き合いが増えていたところへ、自動車生産が急減速から急回復へと転じ、半導体各社が追随し切れなかった。もともと半導体はリードタイムが2~3カ月と長く、増産には相応の手間もかかる。また、半導体メーカーにとって車載向けは全体のわずか2割とされる上、重層的なサプライチェーンのはるか上にいる自動車メーカーの意向も十分に把握できていなかった。

 先進安全技術の普及に伴い、調達した半導体が変わりつつあることも調達をより難しくする。半導体商社の担当者は「車載向けは従来、性能より信頼性が担保された半導体が多かったが、今は民生品用の先を行くような性能が必要だ」と話す。2021年3月期中に4万8千台の減産を見込むスバルは「C・Dセグメントで価格帯の高い電子制御を多く使っている商品が多い」(岡田稔明取締役専務執行役員CFO)と話す。将来の自動運転に用いるECU(電子制御装置)はデンソーや独ロバート・ボッシュなど、このECUに使う半導体チップは米エヌビディアやザイリンクス、インテルなど、それぞれ数社に絞られつつある。

 半導体不足がいつ解消するかはさまざまな見方があるが、日野自動車の中根健人取締役・専務役員は「3月以降は読めない状況」と明かす。昨年暮れから増産を急ぐ半導体各社は取引先に値上げも打診し始めており、スズキの長尾正彦取締役常務役員は「(半導体の)価格の影響もこれから出てくる可能性がある」と身構える。

 自社向け半導体の生産や出荷、輸送状況を調達や生産管理部門が漏らさず把握し、日々の生産計画に反映させているトヨタ自動車。幹部は「先が見えてくるまで綱渡りでつなげていく」としつつ「われわれが半導体メーカーと直接関わることは少なかった。これからはティア1を飛び越えてコミュニケーションをとっていく必要がある」と話す。

 年々、技術の高度化や素材の多様化が進む自動車。他業種との奪い合いになるのは半導体だけとは限らない。「われわれが気付いていないだけで、(そういう部品が)出てくるのではないかと思っている。アンテナを高くして、どの部品をやらなければならないか探っていく」(トヨタ幹部)。今回の半導体不足を教訓にCASE時代のサプライチェーン再構築が始まりそうだ。