「オートモビルカウンシル2020」は当初、4月上旬に開催を予定していたが、コロナ禍の影響による順延で7月31日に開幕し、入場者数の上限設定や入場登録シートの提出といった厳重な感染拡大防止策のもと、8月2日まで実施された。同イベント実行委員会の加藤哲也共同代表(カーグラフィック社長)に、厳しい環境で開催に踏み切った思いや、今後の展望などを聞いた。

(吉田 裕信)

 ―このイベントは今年で5回目を迎えた。改めてイベントの趣旨やコンセプトは

 「日本の産業界は全般的にスクラップアンドビルドの傾向が見られ、ある面では過去を切り捨てることを成長のパワーとしてきた。日本の自動車産業は長い歴史を築いているが、ヘリテージの部分では欧米の一部のメーカーに引けを感じているところもある。しかし、コンプレックスを抱く必要などまったくない。日本の自動車史には宝が埋もれている。それらを点と点ではなく、線にして見せたいと考えた」

 「産業と文化の両面が成熟してこそ真の自動車先進国であり、日本の自動車文化をより深めていくきっかけとなるムーブメントを起こしたかった。そのために日本の自動車産業全体に横串を通し、自動車メーカー、インポーター、こういったヘリテージカーのディーラーの方々が一堂に会する場を設けた」

 ―困難な状況での開催を決断した思いは

 「中止を決めるのは簡単だが、開催できる方策を探った。ただ、『何が何でもやってやろう』という思いではなく、会場を押さえられた巡り合わせや協賛してくれる皆さまのおかげで開催にこぎつけることができた。当然、コロナウイルスの感染拡大防止には採算度外視で全力を尽くした」

 ―アート関係などの出展もあり、クルマに限らず多彩な内容だが

 「自動車趣味をコアなファンのものだけにしておかず、もっとすそ野を広げる契機としての役割、機能も果たしていきたいと考えている。クルマを軸に人生を楽しむエッセンスをこれからも紹介していく」

 ―次回以降の展望は

 「このイベントが直接作用しているとは思っていないが、日本の自動車メーカーでもヘリテージカーのパーツ生産を再開するなど、われわれの思いに賛同するような動きが増えている。規模をより拡大できれば、例えば整備士をレストア専門の技術習得のために海外留学させる支援制度といったプロジェクトを展開したい」

 「日本でも正統的な自動車のカルチャーを発信できる機会を作りたくてこのイベントを立ち上げた。女性(コンパニオン)も音楽もないが、来場者には次回も訪れたいと言ってくれる方が多く、クルマとの対話がしっかりとできているイベントだと考える。今後も自動車文化のさらなる活性化に貢献していきたい」