日本自動車工業会(自工会)は23日、新型コロナウイルスの影響で資金繰りが厳しくなっている企業を支援するための枠組み「助け合いプログラム」を発足したと発表した。自工会が金融機関に預け入れた預金を担保とする信用保証のスキームにより、サプライヤーなど自動車関連企業が最大1億円の融資を迅速に受けられるようになる。日本自動車部品工業会(部工会)、日本自動車車体工業会(車工会)、日本自動車機械器具工業会(自機工)の3団体と連携し、それぞれの技術・技能・人財を〝目利き〟する力を生かして日本のものづくりを守るために必要不可欠な企業を支援する。

 4月10日に4団体が実施した合同記者会見で構想を発表した「互助会」の枠組みを具体化した。当初はファンドの創設を検討したが、喫緊の課題となっている関連企業の資金需要に迅速に応えるため、ファンドよりも早く枠組みを構築できる信用保証のスキームを導入した。

 具体的には、まず自動車メーカーが拠出した合計20億円を三井住友銀行に保証金として預金し、これを担保に支援金を融資する。支援先は、保有している技術や商品、経営状況などを各団体の事務局が中心となって決める。融資対象は、部工会会員の約430社、車工会会員の約300社、自機工会員の約50社(準会員、賛助会員含む)。一方で、裾野が広い自動車産業では会員外企業にも重要な役割を担っている企業が存在するため、非会員の関連企業を対象に加えることも検討する。また、自工会以外の3団体も順次、同プログラムに拠出する方向で調整しており、業界全体で互いに助け合う体制を早期に確立する。

 コロナ禍による経営状況の悪化を支援する制度では「持続化給付金」などの政府によるさまざまな施策がある。今回のプログラムは政府の支援策に対する「補完的な役割」(自工会)として会員企業の短期的な資金調達需要に迅速に応える。一方で4団体は政府の支援策の利用に向けた相談窓口も設置し、政府支援策の活用も促す。

 4月の記者会見で自工会の豊田章男会長が「4団体の致命傷は要素技術と人財を失うこと」と述べたように、自動車産業は裾野が広く、1社の技術や人材の消失が産業全体の競争力を低下させることになる。会見後も新型コロナの影響は拡大し、すでに倒産してしまった部品メーカーもある。

 6月18日に会見を行った部工会の尾堂真一会長は「バブル崩壊時やリーマンショック時よりも深刻だ」と厳しい現状認識を示した。4団体は、政府の支援策だけに頼らず、業界主体の支援プログラムを構築し、自動車産業と日本のものづくりの競争力を維持する考えだ。