オートサロンでは発売予定のアウターなどを公開。ブースではマネキンなどが並び、クルマのショーとは思えない雰囲気となった。
アウターやTシャツは、飛行機の移動でもしわになりにくいなど機能性にもこだわった。
今春発売予定のクストス製機械式腕時計。限定30本で価格は1180,000円(消費税抜き)。
イメージ写真もまさに高級アパレルブランド。オートバックスらしさは全く感じられない。

カー用品大手のオートバックスセブンがプレミアムアパレルブランドを展開する。スイスの高級腕時計メーカーのCVSTOS(クストス)とコラボレーションした新ブランド「ARTA CVSTOS」を「東京オートサロン2020」で初公開した。新ブランドのコンセプトは「快適な移動」。高機能素材のTシャツやアウター、高級アパレル、腕時計、サングラスなどもラインアップする。オートバックスが高級ブランドを手がける理由とは?

オートバックスは長年、モータースポーツを積極的に支援しており、現在はレーシングチーム「ARTA」(オートバックス レーシング チーム アグリ)を中心に活動している。今回のクストスとのコラボは2019年にクストスがARTAとスポンサー契約を結んだことがきっかけ。オートバックスは、クストスブランドを活用することで移動全般の快適性を向上するブランドイメージの確立を狙う。

第1弾として販売する高機能Tシャツは、見た目は良くても汗などでべたつきやすいニットを用いながら、独自加工によって快適性を確保した。上質で機能性の高いコットンなども採用する。価格は1万1000~1万7600円(消費税込み)と、Tシャツとしては高額ながら、クルマや航空機などで移動する際、ファッション性にこだわり、快適性向上などの付加価値を求める層での需要を見込む。今後、移動時の着用を前提としたアウターやスウェット、サングラス、腕時計なども順次投入していく。

オンラインストアを中心に販売し、将来的には百貨店などでの取り扱いも検討する。ただ、既存のオートバックスグループの店舗は顧客層が異なるため、基本的に販売しないという。

カー用品が主力のオートバックスだが、これまでもカー用品以外のブランドを取り扱ってきた。デザイン性の高い小物などを展開するライフスタイルブランド「ジャック&マリー」や、アウトドアライフを中心とした「ゴードンミラー」などだ。アパレルでもジャック&マリーを2019年から取り扱っている。

これらのブランドは、カー用品なども展開しているものの、主な狙いとしてはクルマそのものではなく「クルマのある生活」だ。若者を中心に、ライフスタイルが多様化し、クルマ離れも加速している中、カー用品業界では従来とは異なる新たな顧客層の開拓が長年の課題となっている。オートバックスがこれらのブランドを展開しているのはカー用品に興味のない顧客にアプローチする目的がある。

ただ、クストスは高級輸入車のオーナーや、世界中を飛び回るビジネスマンなど、主に富裕層が愛用しており、オートバックスの顧客とは異なる。このため、クストスとのコラボでは、高級ブランドとしてイメージ戦略を徹底。従来、手がけているカー用品以外のブランドと距離を置き、富裕層の移動におけるニーズやし好に対応した脱・クルマのブランドとして本格的に展開、これまで縁のなかった富裕層を開拓していく。

今後、課題となりそうなのが高級ブランドの顧客層を、オートバックグループとしてのビジネス拡大につなげることができるかだ。既存のビジネスに近付き過ぎると、富裕層向けブランド価値が低下するリスクもある。かといって全国展開してきた経営資源を有効活用しないのも経営的に非効率。富裕層という新しい顧客を開拓できたとしても、事業拡大に向けてジレンマを抱えることになりそうだ。