新工法を採用したバルブシート部

 日産自動車は27日、第3世代シリーズハイブリッド「eパワー」用エンジンのシリンダーヘッドに、金属粉末を超音速で吹き付ける「コールドスプレー工法」を採用したと発表した。自動車用エンジンでは世界初という。バルブシートが不要となり、高い熱効率(42%)と出力の両立に貢献している。

 第3世代eパワー用「ZR15DDTe」エンジンは発電専用エンジンだ。排気量1.5リットルの直列3気筒で過給器を持つ。熱効率や燃費改善のためEGR(排ガス再循環)を多用しており、燃焼の安定性に課題があった。日産はシリンダー内に強いタンブル流(縦方向の渦)を作ることで解決を目指したが、バルブシートの構造上、吸気ポートの形状に制約があり、理想的なタンブル流を作ることが難しかった。

 このため、コールドスプレー工法で銅系の専用材料を吹き付け、アルミ合金上に被膜を形成。別体のバルブシートが不要となり、理想的な吸気ポート形状として燃焼効率の改善につなげた。

 この工法は材料を融点以下で吹き付けるため金属間化合物や空洞の発生も抑え、耐久性と信頼性が高いという。2000年代から航空・宇宙産業などで使われ、金属積層造形(AM)にも用いられる。