●中国ブランドの構築
本来は良質な売れる商品創りを繰り返すことにより、そのブランドは構築される。そうなるまでは、具体的に品質問題が出た時などには、ユーザーが納得、あるいはむしろ喜ぶ形になるように対処することだ。どちらが悪い?どちらの責任?それらは日本では関係ないのだ。丸く収める!しかも顧客にプラスで(それが今はカスハラに?)。
実は、トヨタ自動車を筆頭に日本車メーカーはユーザーファーストのモノ造り(品質向上の取り組み)を愚直に行ってきて、今のブランドができて結果的に輸出の成功につながっていると思う。
広い砂漠の真ん中でクルマが故障するとマジ命にかかわる。
当然、BYD(比亜迪汽車)は日本市場に進出する限りは、これらのことは周知であろうとは思うが、今までは世界に向かって「安さ」を武器に戦い勝ってきた。だからこそ、そのモノ造りの基本を「ユーザーファースト」に切り替えることができるかどうかが日本進出の分岐点になるだろう。たとえ、形や機能ができていても、日本向けのモノ造りのコンセプトがしっかりしていないと、日本でのブランド構築は難しく、進出しても受け入れられないだろう。それは従来からの「日本では輸入車が売れない」という構図である。
またいったん、商品や企業ブランドが棄損されると挽回するのは大変だ。(図4)
●BYDへのアドバイス
ブランド構築への近道があるとしたら、「ホームラン商品」だ。日産自動車のように、ホームラン商品というファクトがほぼ無いままでも、ブランドはイメージとしてできるかもしれないが、長くは続かない。「ホームラン商品」はプラスの注目を多く集めるので、ブランドを構築できる。
「ホームラン商品」によるブランド創りを初期投資と考えたらいい。
ブランド創りのための「いいモノ創り」は、近々の営利よりもユーザーの喜びを生む創造をファーストにすべきだ。営利は結果だ。
BYDにこれができれば、日本はもちろん、世界のカーメーカーの脅威になるだろう。
最後に、日産自動車もリストラは当たり前として、その後をよく考えて頑張って欲しい。
〈プロフィル〉しげ・こうたろう 1979年ホンダ入社、34年間在籍し「CR―Xデルソル」「ライフ」「エリシオン」、2代目「フィット」「N―BOX」など数々のヒット車の開発責任者を務めた。2013年12月定年退職。現在は新聞やネット、雑誌で自動車関連記事を執筆している。1952年7月生まれ

