自動車関連税収と道路整備の関係は切れたはずだが…(道路特定財源制度をアピールしていた看板)

 20日の参議院選挙で自民、公明両党の連立政権が過半数に届かず、衆参両院で少数与党となった。野党が連携さえできれば、政権交代もあらゆる法案を通すことも可能で、ガソリン税(揮発油税)にかかる旧暫定税率(当分の間税率)の廃止が現実味を帯びる。車体課税の簡素化・軽減を求める自動車業界も戦術を見直す必要がありそうだ。

 参院選から一夜明けた21日、石破茂首相は続投を表明した。森山裕幹事長は「各会派とよく調整しながら一致する政策は一緒に進めていきたい」と語った。

 注目されるのがガソリン税の旧暫定税率問題だ。野党第1党、立憲民主党は秋の臨時国会で野党共同で廃止法案を提出し、実現を目指す意向だ。野田佳彦代表が21日に考えを示した。

 前国会では、立憲民主、日本維新の会、国民民主の3党が7月1日からの廃止を目指し、6月中旬に廃止法案を共同提出した際、共産、参政、日本保守、社民が加わった。野党が多数を占める衆院は通過したものの、参院では与党が過半数を占めており、採決が見送られて廃案となった経緯がある。

 消費税率の減税など物価高対策をめぐっては主要野党の考えはばらばらだが、旧暫定税率の廃止については方針が一致している。前回の〝実績〟もあり、足並みがそろえやすい。現時点で、野党各党は自公政権との連立を否定しており「ガソリン減税」では連携できる可能性が高い。

 政府・与党側は減税財源にこだわる。旧暫定税率が廃止されれば「国と地方で年間1.5兆円の財源がなくなり、道路の整備や補修に支障が出る」と主張する。もっとも、燃料税収を道路整備に充てる根拠だった「道路特定財源制度」は2008年度限りで廃止されており、旧暫定税率の廃止が道路予算の目減りに直結するわけでは、必ずしもない。

 野村総合研究所の木内登英エグゼグティブ・エコノミストのリポート(25年3月)によると、24年の1世帯(2人以上)当たりのガソリン消費額の平均値は7万887円だった。旧暫定税率の廃止で「年間9670円の負担減となる」と試算している。

 ただ、旧暫定税率の廃止問題が車体課税議論に飛び火する可能性もある。車体と燃料とでは税目(税金の種類)や業界が異なるが、ユーザーが負担する意味では一緒だ。自動車業界は、世界でも重い車体課税の負担を減らし、新車の代替期間を縮めようと政府・与党に働き掛けてきた。一方で、財政当局は税制改正の方向性を示す税制改正大綱に「自動車関係諸税全体として」という文言を盛り込むなど、電動車シフトで減っていく燃料税収を車体税収で少しでも補おうと躍起だ。

 日本経済における自動車産業の重要性や競争力を強化する必要性では与野党とも一致する。自動車業界としては、現状や現行税制が抱える課題を与野党ともに説明し、車体課税の簡素化・軽減を実現させたい考えだ。