日産自動車のリストラ策を自動車部品メーカーも注視する。ニッパツは19日、「情報が何もなく、見守るしかない状況」(広報)と説明。東プレも「報道ベースでしか状況が分からない」としつつ「仮に報道通りでも直ちに閉鎖するわけではなく、数年を要することになるだけに、情勢を注視していく」(広報)と話した。
経営再建中のマレリホールディングス(HD)関係者は「上層部には話が来ているのだろうが、現場にはまだ話が降りていない」と不安を隠さない。同社は昨秋、追浜工場(神奈川県横須賀市)の機能を数十人の従業員ごと日産追浜工場の敷地内に移転させたばかり。旧カルソニックカンセイ時代の1962年から操業していた旧工場はその後、売却した。日産より一足先に身を縮めた形だが、追浜工場の閉鎖が決まれば、さらなる対応を迫られる。
「これまで(日産を)支えてきたサプライヤーの生死にもかかわることで、日産が生き延びようとするならば、サプライヤーもともに生き延びなければならない。そのあたりの方針を明確に打ち出し、説明することが必要だ」と注文をつける部品メーカー首脳もいる。この首脳は「明確な今後の生産計画を示し、コストアップ対応や償却残の処理、プロジェクトのキャンセル補償など、サプライヤー側への責任を果たすことが求められる」と続け、「特に欧州系サプライヤーは自社自身が厳しい状況。場合によっては、裁判沙汰にしてでも(協議に)臨むだろう」と予想した。
リストラ策「Re:Nissan」への評価も分かれる。ある中部地域のサプライヤー関係者は「目先の利益や株価回復へ大ナタを振るいすぎている印象がある」と話し「『ターンアラウンド』のほうがソフトランディングで良かった。人員削減や工場閉鎖による効率化では、年産200万台クラスに落ち、規模自体が将来的に縮小してしまう」と語った。一方、ZFジャパン(横浜市中区)の多田直純社長は「神奈川県から完成車が生み出されなくなれば残念だが、新しいマネジメントになったからこそできた英断かもしれない」としつつ「単に生産台数を削減するだけでなく、電動化やSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)化といった流れの中、テスラや新鋭の中国メーカーに追いつくのは難しい。新しい価値をどのように商品に植え付けていくか注目したい」と話した。
ある大手サプライヤー幹部は、ホンダとの経営統合協議の際に名前が浮上した鴻海(ホンハイ)精密工業を念頭に「受託生産は一つの生き延び方だ。生産能力をあまり持てない新興プレーヤーに対して製造サービスを提供し、ラインの能力を活用するのも一案ではないか。うまく協業できるスキームを考えれば、自分たちで新商品を開発して世に出すより数倍早い時間軸で収益が上げられる」と語った。