あなたはクルマを売る時に商品知識のみを頭に詰め込んでいませんか?

多くの若手セールスパーソンは、商品を売るのには商品知識が一番必要だと考えていることが多いです。どんな装備が付いているのか、どんなスペックのエンジンなのかなど、カタログを見て必死に商品知識を増やしている様子をよく見ます。

しかし、いざ商談の際、覚えた商品知識を語り、お客さまも商品のスペックには理解を示してくれたにも関わらず、成約に至らず肩を落とすセールスパーソン。商品の魅力が十分伝わったはずなのに何故成約しなかったのか…。

確かに商品知識や価格提示が商談で重要なことは言うまでもありませんが、それだけでは足りません。商品魅力を最大限伝えるためには、商品スペックの説明だけではなく、その商品を購入することでどのようなライフスタイルを実現できるのかを、お客さまにイメージしてもらうことも欠かせません。具体的にイメージしてもらうことで、お客さまの心を動かしやすくなります。それを「ストーリーテリング」といいます。

ストーリーテリングとは、単に商品の情報を伝えるだけではなく、ストーリー(物語)を通じてお客さまの感情や共感を引き出す方法です。人は細かい数字やデータなどで伝えられるよりも、ストーリーの方が記憶の定着率が高く、感情を動かされることが多くなると言われています。その際に重要なのは、勧める商品の説明が、その後のライフスタイルにどう影響を与えていくかをお客さまにイメージさせることです。

理想のライフスタイルをイメージさせるためには、まずお客さまが抱えている不安や悩みを聞き出し、共感し、それを軸にして対応するストーリーを考えて、伝えていきます。その際、伝えることは理想論だけにならないように、過去に実際にあった第三者のエピソードを交えて語ると、お客さまはその場面を自分自身に重ねやすくなります。そして商品を手にすることによってお客さまのニーズが満たされ、思い描いた理想が手に入ることを想像させるストーリ展開を語ります。お客さまの中でイメージが膨らんでいくにつれ、購買意欲は高まっていきます。

人が物事を決断する時は、感情によって決断を下すことも多いです。だからこそ共感や感動と言ったストーリーを伝えることが「欲しい」となるきっかけにもなります。

ストーリーテリングを活用すれば、あなたの商品説明は単なる商品の「説明」から、お客さまにとって価値のある「提案」に変わっていきます。お客さまを物語の主人公にして、最高の結末を迎えさせてあげましょう。

 

文:株式会社プログレス 江原忠宏

〈プロフィル〉えはら・ただひろ 2006年東海大学電子情報学部卒、同年国産ディーラー入社。営業職、店長を務めるも、17年5月輸入車ディーラーに転職。入社2年目に係長昇進、3年連続で販売優秀者表彰。その後人材育成にやりがいを見出し、20年プログレス入社。「人材を『人財』に」をテーマに活動中。静岡県出身、41歳。