次のような質問をされた時、あなたなら瞬時にどう答えますか?
「何でも良いので30秒間フリートークをどうぞ」
おそらく多くの人は瞬時に答えることができず、戸惑ってしまうでしょう。では、次のような質問だったらどうでしょうか。
「あなたの好きなクルマのデザインについて30秒間でお答えください」
今度は先ほどとは違い、答えやすくなっていませんか?
一貫性のないやりとり
若手のセールスパーソンがお客さまと会話している様子を伺っていると、会話が続かずしばし沈黙の時間が流れていることがあります。その時間を気まずく思ったセールスパーソンは慌てて別の話題を振りますが、またも会話が続かず再び沈黙の時間が訪れてしまう…。
このようなことが繰り返し起こると、話題が頻繁に変わり一貫性のない会話になってしまいます。また、すぐに話題が変わってしまうと一つの話題に対して深堀りができず、お客さまの浅い情報しか収集できません。そうなると、セールスパーソンの真骨頂である〝お客さまに寄り添った提案〟はできなくなってしまいます。
沈黙を防ぐには
では、なぜ沈黙が起こり会話のキャッチボールができないのでしょうか。その要因の一つに「質問力」があります。質問には「クローズド質問」と「オープン質問」の2種類があります。
クローズド質問とは、相手にYES、NOで回答をもらう質問法であり、回答の範囲を制限して特定の情報を引き出す際に有効です。オープン質問とは、相手に自由に発言してもらう質問法であり、相手の考えや思いを引き出す際に有効です。この2種類の質問法をうまく活用してお客さまとの会話のキャッチボールをして情報を得ます。
しかし、時として若者はお客さまに、野球でいうナックルボールのような球を投げ困惑させてしまうときがあります。それが最初に記述した相手が戸惑うような質問です。
最初の質問は相手に「何でも良いので」と自由を与えていますが、多くの人は急には回答できず、逆に不自由を感じてしまいます。しかしその後の質問では「好きなデザインについて」と限定しているが、相手にとっては何を話せば良いか明確になり答えやすくなります。
相手の立場で考える
会話のキャッチボールのコツは質問の意図を明確にして、相手が何について話せが良いかわかりやすく質問することです。自分が相手の何について情報を得たいのかを整理して、その答えをどのように質問すれば相手が答えやすくなるかを考えることが大切です。それこそが、相手の立場になって考えるということです。自分の質問が答えやすい質問かどうか、まずは自問自答してみると良いでしょう。
文:株式会社プログレス 江原忠宏
〈プロフィル〉えはら・ただひろ 2006年東海大学電子情報学部卒、同年国産ディーラー入社。営業職、店長を務めるも、17年5月輸入車ディーラーに転職。入社2年目に係長昇進、3年連続で販売優秀者表彰。その後人材育成にやりがいを見出し、20年プログレス入社。「人材を『人財』に」をテーマに活動中。静岡県出身、41歳。