マツダは5月12日、2026年3月期の通期業績見通しを未定とすると発表した。米トランプ政権の関税政策などの影響が不透明のため。影響を今後精査し、25年4~6月期決算発表時などに見通しを公表する。世界販売台数は25年3月期(130万3000台)並みを目指すとし、関税影響の最小化に向けて全社でのコスト削減などを急ぐ。
マツダが期初に通期見通しの公表を見送るのはコロナ禍の21年3月期以来、5年ぶりとなる。関税影響で公表を見送るのは日本の自動車メーカーではマツダが初めて。マツダは米アラバマ州にトヨタ自動車と共同出資した工場を構えるものの、米国販売に占める現地生産比率は2割弱にとどまり、日本やメキシコからの輸出割合が高く、追加関税の影響が大きい。
26年3月期の販売は、前期並みを目指すが、地域別の台数見通しなど詳細は示さなかった。関税影響の最小化に向け、部門横断の対応チームを立ち上げており、仕様の最適化などに取り組むほか、生産台数維持に向けて仕向地を柔軟に検討するなど、対応を急ぐ。
また、「CX-50」を生産するアラバマ工場では、今月12日からカナダ市場向けを一時停止し、生産能力を米国市場に振り向ける短期的措置を始めた。6月以降には、間接部門の正社員を対象に500人規模の希望退職も募集するなど、体制の見直しを急いでいる。
国内生産について毛籠勝弘社長は「しっかり守っていくことが自動車産業や日本経済において極めて重要だ。広島・山口で70万台程度の生産レベルは一時的に切れても必ず押し戻していきたい」と、影響の最小化に努める姿勢を強調した。
25年3月期の連結売上高は5兆188億円(前期比4.0%増)で3年連続で過去最高となったものの、営業利益は同25.7%減の1861億円だった。世界販売は同5%増の130万3000台。このうち米国販売は同16%増の43万5000台と33%を占めた。北米での販売好調や円安が増益につながったものの、販売奨励金の増加が1249億円の減益要因となった。