ホンダは、年内に発売する軽乗用車の新型電気自動車(EV)で、販売会社の営業スタッフ向けの奨励金制度を導入する。新型EVの受注を獲得したスタッフに、5万円を支給する。対象は1台目のみ。EVの商談は説明項目が多く、苦手意識を持つスタッフが少なくない。奨励金をきっかけに、一人ひとりにEVの商談での成功体験を積ませることで、系列販売店での提案力を底上げする考えだ。
「N―ONE(エヌワン)」をベースにした軽EVで、新たな奨励金制度を設ける。EVに特化した営業スタッフ向けの奨励金を、ホンダが全国で展開するのは今回が初めてとみられる。5万円の奨励金は、メーカーと販社が折半して負担する。
ホンダが現在販売しているEVは、軽商用の「N―VANe:(エヌバンイー)」のみで、メインの顧客層は都市部の法人客となっている。このため、EV販売の経験がこうした地域を商圏に抱える販社に偏りがちになっている。新型軽EVは個人を含め、幅広い顧客層に提案の余地がある乗用車のため、販売現場のモチベーションを刺激するとともに、営業スタッフのスキルアップにもつなげる。
ホンダは2030年に国内のEV比率を20%、35年に80%に高めるなどとした長期のEV販売目標を現状変えていない。足元の比率は1車種のため高くはないとみられるが、今年の軽EVと、26年に発売予定の登録車のEV2車種を軸に巻き返す計画。
この中でもホンダは、軽EVが特に需要が見込めるカテゴリーとみている。日産自動車と三菱自動車が22年6月に発売した乗用EV「サクラ」と「eKクロスEV」の24年度の販売台数は計2万3千台で、EV市場全体(乗用車のみ)の約4割を占めている。中国・比亜迪(BYD)も26年後半に軽EVを投入することを表明済みで、市場活性化が進むとみられる。ホンダは奨励金を活用することで販売機能を強化し、競争激化が見込まれる軽EV市場で存在感を示す狙いだ。