ボルボ・カー・ジャパン(VCJ、不動奈緒美社長、東京都港区)が、電気自動車(EV)のオンライン販売をやめたことが7日までに分かった。EV販売はこれまでオンラインのみとしてきたが、店頭販売に切り替えた。非対面で車を購入できるオンラインの手軽さが一定の評価を受けていたものの、実店舗での現車確認や営業スタッフの接客を求める顧客のニーズが想定以上に高かったためとみられる。今後はオンライン販売を通じて高めたスタッフのノウハウと、実車を生かした商談が行える店舗の強みを融合した商談の実施で、EVの販売拡大を目指す。
VCJでは、EVの販売手法を4月に変更した。同社は2022年にオンライン販売を導入。仕様選定から見積もり、契約や支払いをオンライン上で行える仕組みを整えた。納車やサービスは、実店舗が担う。商談時は顧客の細かい疑問や要望にも対応するため、専門のスタッフがオンライン会議システムを使用し、説明を行ってきた。ただ、現車を活用しながら対面で接客する場合と比べると、顧客に意図が伝わりにくく、購買意欲を高めにくい課題も出ていた。
VCJは現在、3車種のEVを販売している。オンライン販売の割合は、25年に同社の国内販売台数の約半数にする予定だった。ただ、実店舗への来店客に対してスタッフの提案意欲を高めにくかった可能性があるほか、足元で顕在化しているEV市場の減速も方針変更の背景にあるとみられる。
同社は競合モデルに比べ、EVの商品競争力が高いとみている。加えて、ハイブリッド車(HV)などもそろえており、店頭販売の移行で、顧客の要望に応じた最適なパワートレインを提案できるようにしていく考えだ。
自動車のオンライン販売は、米テスラが先行している。多くの自動車メーカーやインポーターでも、コロナ禍で非接触対応のニーズが高まっていた20年以降に導入するケースが相次いだ。国内では店頭での商談を求める顧客が少なくなく、定着するには至っていないのが実情だ。ただ、メーカーやインポーターにとっては中間コストの抑制につながる利点があるほか、今後、デジタル技術を受け入れやすい若年層が主流になっていけば、オンライン販売が主軸となっていく可能性もある。