ゼネラルモーターズ・ジャパン(GMジャパン、若松格社長、東京都品川区)は、キャデラック初の電気自動車(EV)「リリック」で同社が在庫費用をもつ独自の「エージェントモデル」方式を採用した。定価の1100万円(消費税込み)で、店舗での値引きは行わずに全国一律の価格で販売する。同方式を導入するのは、同社として初めて。一般的にエージェントモデルはテスラが導入したとされている。値引きを抑制できる利点があるものの、価格決定権がなくなる販売会社の反発が強いなど課題も多い。世界的に試行錯誤が続いており、GMジャパンの取り組みは注目されそうだ。

 一般的にはメーカー(輸入車はインポーター)が消費者と直接契約を結ぶもの。ディーラーはあくまで仲介業者(エージェント)となり、メンテナンスや手数料が主な収益源となる。メーカーやインポーターにとっては、過剰な値引きを抑制することでブランド価値を維持しやすくなるメリットがある。

 GMジャパンが導入した方式は同社が在庫を持ち、顧客に同じ価格で販売する。ディーラーは価格交渉をせず顧客と販売契約を結び、手数料を得る。整備入庫も収益源となる。同社はリリックをディーラーに卸売りしないため、価格をコントロールできる。仮に、卸売りをした上で価格を指定すれば、原則的に独占禁止法違反(再販価格の拘束)となる恐れがある。

 GMジャパンの販売店は現在、全国に13店舗ある。ヤナセ(森田考則社長、東京都港区)や光岡自動車(大野貢社長、富山市)、ケーユーホールディングスなどのグループ会社など5法人が運営している。GMジャパンによると、エージェントモデルの導入についてディーラー各社は「自分たちで在庫を持たなくていいので歓迎してくれている」という。特にリリックは価格が「1千万円超なため、在庫負担が重い」としている。

 エージェントモデルについては、メルセデス・ベンツ日本(MBJ、ゲルティンガー剛社長兼CEO、千葉市美浜区)も26年4月の導入を目指していたが、昨年末に「無期延期」したもよう。欧州でも、一部で導入したが見合わせたりするケースもある。

 日本自動車輸入組合(JAIA、ゲルティンガー剛理事長)の統計では24年の外国メーカー車の販売台数が22万台超だった一方、GMジャパンが取り扱うキャデラック車の販売台数は449台(シボレーは565台、乗用車)だった。EVの販売台数も相対的に多くはないと推測され、ディーラー側の抵抗感も少なかったのではないかとみられる。ボリュームが見込みにくいモデルの場合は、ディーラー側のリスクを抑えるための手段の一つになる可能性もありそうだ。

(2025/3/24 修正)