APBが開発した全樹脂電池

 東京商工リサーチは、次世代二次電池として期待されていた「全樹脂電池」を開発していたAPB(福井県越前市)が23日に福井地方裁判所から破産開始の決定を受けたと発表した。負債総額は34億8500万円。

 APBは、日産自動車で電気自動車(EV)「リーフ」に搭載されたリチウムイオン電池の開発に携わった堀江英明氏が2018年に設立したスタートアップ。全樹脂電池は発火のリスクが低いなど、安全性が高い構造で、エネルギー密度も高いことからEVの航続距離を延ばせると実用化が期待されていた。三洋化成は19年にAPBに出資して子会社化したが、22年に半導体設計を手がけるスタートアップのトリプルワンに保有株式の大部分を売却した。

 APBは、量産に手間取る中で先行投資が大きな負担となって赤字経営が続く中、トリプルワンの主導で24年6月に堀江氏が代表取締役を解任されるなど、経営権をめぐる対立が表面化した。昨年11月にはメインバンクの北國銀行グループの投資会社がAPBの支援に向けて会社更生法を申請したが、その後、資金調達計画が頓挫したことから申請は取り下げられた。

 今年2月末に全従業員に対してリストラが通告され、4月末までの休業を告知していたが、今回、破産が決定した。