日産自動車と三洋化成工業は16日、三洋化成工業子会社のAPB(堀江英明社長、東京都千代田区)に全樹脂電池の要素技術をライセンス供与すると発表した。APBは要素技術を活用し、世界初となる全樹脂電池の商業化を目指す。日産は所有する技術や知見を外部に提供するライセンスビジネスに注力しており、得られたライセンス料を生かして新たな技術開発を加速する考え。

 ライセンス供与するのは、日産と三洋化成工業が2012年から共同開発してきた「バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池の技術」。これは、樹脂の集電体に樹脂で被膜した活物資を塗布し、1枚の集電体の両面に正負極を形成するバイポーラ(両極)構造とすることにより、リチウムイオン電池(LIB)の生産性やエネルギー密度を高められる技術。電解液をゲル状の樹脂に置換することにより、安全性も向上する。

 APBは現在、21年の稼働に向けて年間1㌐㍗時規模の電池を生産できる全樹脂電池の生産工場の設立準備を進めている。ライセンスを受けた技術を活用し、定置用バッテリーの量産を目指す。

 日産は12年に自社の技術を外部にライセンス供与するビジネスを本格化。これまでパイオニアや独ヘラー、日立建機などにライセンスを供与しており、事業売上高は増加傾向にあるという。