下請代金支払遅延等防止法(下請法)の規定(下請代金の減額の禁止)に違反する行為があったとして、公正取引委員会は3月19日、クノールブレムゼ商用車システムジャパン(石橋誠代表取締役、埼玉県坂戸市)に対して再発防止など勧告を行ったと発表した。
公取委によると、同社は遅くとも2023年9月から24年4月までの間、商用車用排気ブレーキなどの部品製造を委託していた下請事業者9社に対して、自社(クノール社)の原価低減を目的とする「ワン・タイム・ボーナス(一時金)」などとして、下請代金の額から合計約6738万円を不当に差し引いていた。
クノール社は下請代金の額を減じることについて、下請事業者と交渉した上、書面で合意をしていた。しかし、下請法上は下請事業者と合意があったとしても「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること」を禁止している。そのため、合意の有無に関わらず、同社の行為は下請法違反となる。
今回の事案は、中小企業庁がクノール社に対して調査を行い、1月31日に中企庁長官が下請法第6条の規定に基づいて公取委に措置請求を行ったもの。措置請求に基づく勧告は今回で23件目となる。
中企庁の調査によると、ある下請事業者の担当者においては、クノール社が提案した減額に合意するまで帰してもらえない事例もあったという。
なお、クノール社は2月21日に下請事業者に対して減額した金額を支払った。
下請法の適用基準は、親事業者と下請事業者の資本金で決まる。発注側の資本金が1000万円超~3億円以下の場合、下請事業者は1000万円以下となる。近年、企業が意図的に資本金を増やしたり、減らしたりして法律の適用を外す「下請法逃れ」が増えている。
クノール社の資本金は現在2億9000万円だが、違反行為時は3億9000万円だった。中企庁は減資の理由について「確認できていない」としている。
同社は、ドイツに本社を置く輸送用機器製造メーカーであるクノールブレムゼの日本法人で、商用車用ブレーキなど各種制御装置の製造・販売を行っている。勧告を受けたことについて「厳粛に受け止めている。今後、社内の取引慣行の改善やコンプライアンス(法令順守)の強化に努める」とコメントした。