マツダは18日、パートナーとの協業などによって投資を抑制しながら電動化戦略を推進する計画を発表した。電気自動車(EV)専用工場は設けずに既存の生産拠点でEVを効率的に混流生産できるようにしてEV生産に伴うコストを抑制する。中国の合弁相手である重慶長安汽車と、クロスオーバータイプの電気自動車(EV)を共同開発、2027年までに市場投入する。また、独自開発EVの基幹技術はトヨタ自動車グループと協業していく。インフレなどでコストが上昇する中でも22~30年までの電動化投資を5千億円圧縮して1兆5千億円を維持する。EV市場の先行きが不透明な中、現有資産を活用しながら成長を目指す。
同日、資産を有効活用しながら電動化を進める「ライトアセット戦略」と競争力の高いモデルを短期間で開発し、効率的に生産するための「ものづくり革新2.0」の説明会を都内で開いた。
インフレで材料や設備などのコストが上昇しており、30年までの電動化投資計画は2兆円規模になる見通しだが、電動化を推進しながら投資を1兆5千円規模にとどめる。このうち、電池関連投資は30年までに当初5千億円を見込んでいたが、インフレで7500億円を超える見通しとなった。長安汽車と共同開発したEVを中国や欧州、東南アジア諸国連合(ASEAN)に投入するなどして投資を半減し、当初計画よりも低く抑える。
長安汽車とは共同開発EVとして2車種目となるクロスオーバータイプのEVを市場投入するのをはじめ、30年までに計4車種の展開を検討中だ。
また、E/E(電気/電子)アーキテクチャーや車載OS(基本ソフト)の一部、先進運転支援システム(ADAS)などはトヨタやデンソー、電動車向け駆動用モーターシステムを手がけるブルーイーネクサス(内山秀俊社長、愛知県安城市)と連携していく。
独自開発しているEV専用プラットフォームは、国内で生産して27年に米国市場に投入する予定。駆動用電池は将来的に性能進化が見込まれることから、サイズや形状、タイプなどさまざまなものに対応するプラットフォームを設計する。モデルベース開発(MBD)と人工知能(AI)による解析を採用して開発リードタイムを短縮する。開発工数で5割、投資規模で4割をそれぞれ削減する。
さまざまなパワートレインのモデルを効率的に生産するため、生産現場も進化させる。防府工場(山口県防府市)では、パワートレインを組み立てながら搬送できる自動搬送機(AGV)を活用している。今後、国内外の工場にも導入することで、内燃機関車やEVなど、工程数の異なるモデルを柔軟に混流生産できる体制を整える。
車両制御ソフトの種類数の削減といったサプライヤーと一体になった取り組みも、今後ワイヤーハーネスなどに領域を広げ、サプライチェーン(供給網)の効率化と強靭化に取り組んでいく。
同社は30年までに3段階で電動化を進める計画で、25年度から「フェーズ2」期間に入る。毛籠勝弘社長は「ものづくり革新2.0は効率的で柔軟なものづくりを進化させるもので、電動化時代も走る歓びを追求していく」と語った。