北米では販売競争が激化している(日産系ディーラー)

 自動車メーカー9社の2024年4~12月期決算が出そろった。売上高は6社が増収となった一方、当期純損益は6社が減益もしくは赤字に終わった。米国の販売競争激化や中国・東南アジア市場の低迷が響いた。米中対立の激化やトランプ米政権が繰り出すさまざまな関税の影響も必至で、新車需要は堅調ながら先行きは波乱含みだ。

 4~12月期の売上高は9社中、6社が前年を上回った。全体的に販売は伸び悩んだものの、値上げが進展したことや、前期に対してドル円が約10円安くなったことなどで売上高が膨らんだ。トヨタ自動車、ホンダ、マツダ、スバルは4~12月期として過去最高を記録した。

 ただ、収益面では苦しんだメーカーが多かった。減益要因の一つが米国のインセンティブ(販売奨励金)増加だ。「中国や欧州市場が調子が出ない中、日米欧の各メーカーがこぞって北米を重視している。この競争環境は今後も緩まらないと思う」と話すのはスバルの水間克之最高財務責任者(CFO)。業界の中では比較的、販売奨励金が少ないスバルだが、それでも1台当たり2千㌦(約30万円)と、前年同期と比べて950㌦(約15万円)増えた。

 マツダも「CX―50」にハイブリッド車(HV)を追加するなど商品力を強化して販促費の抑制に努めたものの、昨年12月時点で1台当たり3千㌦以上と高水準で推移。ジェフリー・エイチ・ガイトンCFOは「ピークよりは減少させられているが、引き続き改善に努める」と気を引き締める。日産は、米国の販売奨励金増加の影響が1千億円の営業減益要因となった。

 中国の低迷も続く。トヨタの4~12月期の中国販売は同8.2%減の140万2千台。減少率こそ緩やかになってきたものの、持ち分法による投資損益は販売費用の増加などで前年同期比68.9%減の686億円と大幅減少した。ホンダの4~12月期の中国販売も前年同期比36.3%減の64万5千台に終わった。

 対ドルの円安は今期も営業収益にプラスに作用した。トヨタは為替が4900億円の増益要因に、スバルも1126億円の増益要因になった。ただ、ドル以外の通貨ではネガティブな効果を受けたメーカーも。三菱自動車は、対タイバーツの円安によるコスト増加が収益を圧迫。通期の当期純利益予想を前回予想と比べ7割以上、下方修正した。加藤隆雄社長は「想定外のタイバーツの逆行だ」と戸惑いを隠せなかった。

 総じて厳しい決算が目立った4~12月期だが、通期の業績見通しを上方修正したメーカーもある。トヨタとスズキ、スバルの3社だ。

 トヨタは営業利益を4千億円上方修正した。想定為替レートを1㌦=152円へと見直したことが大きいが、宮崎洋一副社長は「価格改定や販売奨励金の抑制、バリューチェーン収益が拡大した。継続的に高い商品価値を継続できた」と語った。

 スズキも通期の営業利益見通しを前年度比19.5%の5900億円へと上方修正した。河村了常務役員は「国内では価格設定(値上げ)や販売状況改善の効果が出てきた」と説明する。インド製「フロンクス」「ジムニーノマド」なども絶好調で、ジムニーノマドは開始から5日で受注を見合わせている。

 ただ、先行きは依然として不透明だ。トランプ米大統領は〝本丸〟の自動車関税に言及。日本は自動車に輸入関税をかけていないが、過去の日米摩擦で繰り返された「非関税障壁」の理屈を持ち出す公算もある。トヨタの宮崎副社長は「いろいろなことが見えてからいち早く動いていく」と身構える。コロナ禍で磨いた変動への〝追随力〟が再び試されそうだ。