スカイアクティブX(HF―VPH型)

 マツダは、独自開発した「火花点火制御圧縮着火」(SPCCI)で〝理想のエンジン〟として売り出した「スカイアクティブX」エンジンの開発を止め、生産も追って打ち切ることを明らかにした。搭載車種の販売が低迷している上、電動車シフトの中で開発の優先順位が低いと判断した。開発の過程で培った技術は次世代の「スカイアクティブZ」やロータリーエンジン(RE)に生かしていく。

 スカイアクティブXは、軽負荷時にはディーゼルエンジンに近い圧縮着火で運転することで、熱効率の大幅な改善に成功したガソリンエンジン。ベースエンジンに比べ燃費は最大で2割高まり、スロットルレスポンスにも優れる。日本燃焼学会の技術賞をはじめ、数々の表彰も受けている。2019年に「マツダ3」「CX―30」に「HF―VPH型」(排気量2㍑)をそれぞれ設定した。

 しかし、主力のガソリンエンジン「スカイアクティブG」搭載車と比べ70万円ほど高く、販売が低迷。23年には国内向けCX―30の一部改良に合わせスカイアクティブXの設定を廃止した。現在、設定されているのは国内や欧州など向けのマツダ3や欧州とニュージーランド向けCX─30にとどまる。

 マツダとしては、スカイアクティブXエンジンのコスト削減や燃費向上につながる技術を開発してきたものの、この先は電動化投資も膨らむため、コストの割に燃費改善効果が見込めないスカイアクティブX機の開発継続を断念することにした。

 マツダは現在、4気筒のガソリンエンジンのスカイアクティブZを開発中で、27年に実用化する計画だ。幅広い回転域で超希薄燃焼を実現する低燃費エンジンで、現行のスカイアクティブGの後継機種になるとみられる。また、レンジエクステンダー(航続距離延長装置)として作動する2ローターのREも開発している。

 スカイアクティブXで培った燃焼技術などに関する知見は、これらのスカイアクティブZやロータリーエンジンの開発に生かしていく考えだ。