世界ラリー選手権(WRC)第13戦(最終戦)「フォーラムエイト・ラリージャパン2024」が11月21~24日、愛知県と岐阜県を舞台に行われた。トップカテゴリーの「ラリー1」では、母国開催のトヨタ自動車(トヨタ・ガズー・レーシング)が1、2位を獲得し、年間のマニュファクチャラーズ(製造者)タイトル4連覇を達成した。年間のドライバーズタイトルとコ・ドライバーズタイトルは、現代自動車(ヒョンデ・モータースポーツ)のティエリ・ヌービル選手、マーティン・ヴィーデ選手が初めて獲得した。最終日まで日韓自動車メーカーによるタイトル争いが白熱し、会場に訪れた国内外の多くのラリーファンも大いに盛り上がった。
中部地区でのWRC開催は今回が3回目となる。競技区間の「スペシャルステージ(SS)」は、愛知と岐阜の5市1町にまたがり、移動区間の「リエゾン」を含む走行距離は合計で1千㌔㍍超にも及ぶ。ラリー車が疾走する山間部は紅葉が色づき、日本らしい独特の雰囲気の中でレースが行われた。
最大の見どころとなったのが愛知県豊田市の「豊田スタジアム」内でのスーパーSS(SSS)だ。全SSで唯一、2台のラリーマシンが並走してタイムを競った。迫力のある走りを観戦できる360度ターンが追加されるなど、昨年よりコースに工夫を凝らした。
最終戦となったラリージャパンは、マニュファクチャラーズタイトルが決まる大一番となった。昨年王者のトヨタは前戦のセントラル・ヨーロピアンラリーまでのポイントランキングがヒョンデに次ぐ2位で、最終戦で逆転優勝を狙えるポジションにあった。
勝敗は最終日までもつれ込んだ。デイ3(3日目)終了時点で首位のヒョンデのオィット・タナック選手と、2位のトヨタのエルフィン・エバンス選手とのタイム差は38秒。デイ4(最終日)1本目のSSでタナック選手がコースオフでリタイヤすると、エバンス選手が首位に立ち、3位だったトヨタのセバスチャン・オジエ選手が2位に繰り上がった。最終の「パワーステージ」ではエバンス選手が3番手、オジエ選手がベストタイムをマーク、チーム戦でヒョンデとわずか3点差で逆転優勝を果たした。
トヨタの年間マニュファクチャラーズタイトル獲得は4年連続、通算8回目。WRC歴代2位のシトロエンと並んだ。
ラリー1に参戦した唯一の日本人ドライバーであるトヨタの勝田貴元選手は総合4位となり、今シーズンの総合ドライバーズランキングは6位となった。ホームという重圧の中で参戦した勝田選手は「精神的に厳しいところもあったが、チームが支えてくれて強い気持ちを持って走ることができた。来年にしっかりつなげていきたい」と語った。
トヨタはラリージャパン翌日の25日に、25年の参戦体制を発表した。24年シーズンのラリー2でドライバーチャンピオンとなったサミ・パヤリ選手が加入し、ドライバー5人体制となる。チーム代表のヤリ・マティ・ラトバラ氏は「ここ数年一緒に戦ってきた強いドライバーたちと再びチームを組めることをとてもうれしく思う」と述べ、25年シーズンでのダブルタイトル奪還を目指す姿勢を示した。
ラリージャパンを主催する豊田市は28年までの開催を決めており、今後もラリーファンの拡大や国内のレース文化醸成に取り組んでいく方針だ。ただ、今回のレースでは3日目にSS区間に検問を突破した一般車両が侵入して競技が中止されるトラブルが発生、ラリージャパン主催者に最大15万 ユーロ (約2400万円)の罰金が科されることになった。
ラリーはクローズドコースで開かれるレースより観客との距離の近さが魅力のひとつとなっている。今後、安全対策の強化が求められそうだ。