日本自動車工業会(自工会、片山正則会長)が電動キックボードなど次世代モビリティのリサイクル体制づくりを急いでいる。こうした車両は、自動車リサイクル法(自リ法、使用済自動車の再資源化等に関する法律)の対象外だ。手をこまねいていると将来、不法投棄などにつながりかねず、電池やモーター材料の資源循環も進まない。このため、自動車リサイクルの枠組みを活用し、処理費用を廃棄時に支払えるようにしたり、専門知識を持つ解体事業者「次世代モビリティリサイクラー」を増やすなどして環境を整えていく。
自リ法の対象である乗用車やトラックは、車両の回収からフロン類やエアバッグ類の処理、資源リサイクルまでのスキームや費用分担の枠組みがすでにある。自リ法の対象外である二輪車も業界によるリサイクルシステムが運用されている。一方、電動キックボードや1人乗り四輪車など「パーソナルモビリティ」と呼ばれる輸送機器は、いずれの枠組みでも対象にならず、フロンやエアバッグ類、リチウムイオン電池などの適切な処理ルートがない上、電池は自治体間で廃棄時の取り扱いが異なる。
富士経済(菊地弘幸代表、東京都中央区)によると、国内における電動キックボードの保有台数は2023年の約1万5400台から35年には43万台へ増える見通し。リサイクル体制の構築が急務だ。
このため、自工会は関係部会の傘下に「自リ法対象外車両対応分科会」を設け、対応策を検討してきた。
現在、構築中のリサイクルシステムは、新車販売時にユーザーからリサイクル費用を徴収していない製造事業者も「後払い」で参画できる。一定の技術を満たす次世代モビリティリサイクラーが車体を引き取り、処理を請け負う仕組みだ。電池などを取り外した車体は従来の廃車ガラと一緒に運び、輸送費を減らす工夫も採り入れた。
次世代モビリティリサイクラーは今年3月時点で約80社ある。ただ、地域的な偏りもあり、電動キックボードが増えている東京や大阪などの大都市部では少ない。自工会としては電動キックボードの普及と合わせ、都道府県当たり10事業所、全国で最大500事業所程度を次世代モビリティリサイクラーに認定するなどし、適正処理の枠組みを整えていく。電動キックボードメーカーや輸入業者にも参加を促していく考えだ。