園児のクラクション体験
親子でトラックの死角を体験
地域の交通安全教育を担う石原社長

 はちどり(石原慧子社長、愛知県安城市)は、自動車教習所「コアラドライブ安城」を運営し、地域における交通安全啓発活動を幅広い切り口で積極的に展開している。

 同社は地域の幼稚園向けに自社の教習所で交通安全教室を定期開催していたが、2021年以降に通園バスや自動車への子どもの置き去り事故が頻発したことを受け、22年10月に園児置き去り事故防止策としてクラクション体験をカリキュラムに取り入れた。

 園児がバスの運転席でクラクションを鳴らそうとしても力が足りず鳴らせない事実を受け、立って両手で全体重をかけて鳴らす必要性を実体験を通じて園児に理解してもらう取り組みだ。

 石原社長は「子どもが車に閉じ込められて命を落とすなど絶対にあってはならない。子どもを乗せることは『未来』を乗せること。クラクション体験は小さな取り組みだが、できることから始めた。微力だが無力ではないはず」と力を込め、現在もこの取り組みを継続している。

 この園児向けクラクション体験プログラムは、CSP大賞選考委員特別賞を受賞した。「小さな取り組みでも価値があると認めてもらえた。受賞によりこの取り組みを知った人には、子どもの命を守るために日常生活の中で交通安全教育を行ってほしい。特別な施設が無くても子どもが自分の命を守る行動を大人が教えられるということを伝えたい」(石原社長)。

 通園バスなどへの子どもの置き去り事故頻発を背景に、23年4月に送迎バスへの置き去り防止安全装置の設置が義務付けられた。

 一方で同社は「交通安全対策に必要なのは、まずは人間の教育。子どもは親を見て育つので、子どもだけに教育しても効果があるか疑問だ」(同)との考えで、23年5月から親子で学ぶ交通安全教室を教習所で開始した。家族参加による小学校新一年生向けプログラムで、例えば、実際に親子でトラックの運転席に乗ってドライバーからの歩行者の見え方を知ることでトラックの死角を学べるなど、参加者からは好評だ。

 今後について石原社長は「交通事故が無い社会に向けて、スピード感を持った交通安全教育を継続していく。時代により交通事故の傾向が変化するので、これに合わせた活動が必要だ。当社が展開する交通安全カリキュラムを横展開していきたい。メーカーや他教習所など、要望があれば積極的にノウハウを提供したい」と抱負を語る。