2024年に入り、自動車整備事業者の倒産(休廃業・解散含む)が過去最多ペースで推移している。帝国データバンクによると、7月までに298件(倒産27件/休廃業・解散271件)発生した。過去最多だった20年の418件(倒産58件/休廃業・解散360件)を上回るペースだ。深刻化している人手不足や後継者不在、専門の設備や知識が不可欠な自動車技術の高度化などが背景にある。
「自動車一般整備業」または「自動車車体整備業」を主業とする企業の動向をまとめた。
同社によると、全国の自動車整備事業者、約1万7400社の経営者の57.0%が60歳以上だ。後継者不在率(23年調査)も59.7%という結果だった。後継者がなかなか見つからないまま年を重ね、ついに休廃業・解散を決断する様子がうかがえる。人手不足も深刻だ。22年度の自動車整備士の有効求人倍率は11年度と比べて4倍以上の5.02倍に上昇した。
新たな技術や素材へ対応し切れないことも要因として挙げられる。例えば、先進運転支援システム(ADAS)の普及を背景として20年度に「特定整備制度」がスタートし、対象車はバンパーやフロントガラスの脱着でさえ、認証がなければ作業できなくなった。準備期間に当たる4年間の経過措置が終了した24年3月末の累計認証件数は5万7349件(うち自動運行装置は218件)で、認証工場全体の約6割にとどまる。
認証工場全体に対する取得率の低さは業態による入庫状況の差にある。電子制御装置整備は、事故などで車体を損傷したり、飛び石でフロントガラスが傷ついた車両が作業の主な対象となる。認証工場全体の大半を占める一般整備や車検を行う整備工場は、認証取得の必要性を感じるほどではないという。
それでも、日本自動車整備振興会連合会(喜谷辰夫会長)の「自動車整備白書」をはじめとした調査では、約1割の事業者が廃業や外注などを前提に「認証を取得しない」と回答した。人手不足や補修技術の高度化に加え、交通事故件数の減少などもある。
保険修理の工賃算出に使う「指数対応単価」が約30年にわたってほぼ据え置かれてきたことも経営の厳しさに拍車をかけている。日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連、小倉龍一会長)は30年ぶりに損害保険各社と団体交渉に入ったが、単価の引き上げには人件費をはじめとする原価の上昇を客観的に説明する必要もある。
同社は「今後も町の整備工場を中心とした自動車整備事業者の休廃業・解散は増加し続ける可能性が高く、若年層の整備士の確保・育成が急がれる」と分析している。