公道実証に活用した「eキャンター」ベースの塵芥車
ごみの収集は、頻繁なクルマの乗り降りなど作業者への負担が大きい(写真はイメージ)

三菱ふそうトラック・バスが自動運転の塵芥車の実用化を目指している。2023年には公道で実証を行った。塵芥車の自動運転は、作業者が繰り返し車両から乗降することがなくなるなど、作業負荷軽減につながる。同社は公道での実証を通じて、塵芥車に最適な自動運転技術開発を進めていく。

同社は、21年から環境省の「デジタル技術の活用等による脱炭素型資源循環システム創成実証事業」に参画し、試作車の製作や自動運転技術開発に取り組んでいる。

23年度の公道実証で使用する車両は新型電気トラック(EVトラック)「eキャンター」をベースに開発。22年度までは、カメラで作業者や歩行者、自転車、ごみ袋を認識していたが、23年度の車両では、ごみの集積所や自動車も認識できるようにカメラを改良。さらに周辺の障害物検知のため、超音波センサーを追加した。車両前後に2個、コーナーに4個、左右に5個ずつ搭載し、約2メートル以内の障害物を検知できる。

ソフト面では2種類の停止方法を追加した。一つ目は、車両に追尾される人(運転者)がリモート端末から「Stop Here」ボタンを押すと、運転者がボタンを押した場所をシステムが記憶し、運転者の場所まで走行して停止する。二つ目は、運転者がごみ集積所に近づいたところで「Stop at Garbage Point」ボタンを押すと、車両の先にある最も近い集積所を停車位置と認識し、その位置が車両後端になるように停止する。こうした新たな機能を追加し、公道で検証した。

実証は23年11月、川崎市高津区坂戸地区と、同市川崎区殿地区で行った。坂戸地区は13カ所、殿町地区は20カ所のごみ集積所で、それぞれ1時間程度の作業を行った。三菱ふそうの担当者が運転者となり、車両が運転者を追尾した。実証では、自動運転技術のほか、運転者の車両からの乗降回数やごみ収集作業時間などの作業効率なども検証した。

カメラやセンサーを使うことで、見えやすいごみの集積所は約5~10メートル付近から認知できたものの、道路や歩道から奥まった場所にあったり、電柱越しで見えにくい集積所は認識ができなかった。さらに雑草や、周辺の人・モノを検知してしまい、自動停止するケースが多数あったという。今後は狭い道路で使うことも想定し、障害物の区別方法を改良する考えだ。

さらに、自動追尾する塵芥車は一般的な自動運転車とは異なり、常に作業者などを検知し続ける必要がある。ごみの位置や種類の認識も必要となるため、センサーのロジックを改良して機能向上を図っていく。

車両開発などに携わった開発本部の木下正昭マネージャーは「(塵芥車の自動運転で)一番重要なのは作業の効率化や作業者の負担軽減。実証でかなり軽減できたことを確認した」と自信を示した。今後も環境省などが実施する事業などへの参画を通じて実証を重ねて、実用化を目指す考えだ。

(藤原 稔里)