パナソニックのリチウムイオン電池

 パナソニックホールディングスの電池事業会社、パナソニックエナジーは6日、北米に集中している車載電池事業を、日本を含む〝2軸体制〟へシフトさせる方針を明らかにした。米国での電気自動車(EV)販売が鈍化しているため、リスクの分散を図る。日本では新たにマツダやスバルから受注できる見通しとなったことから、住之江工場(大阪市住之江区)の体質強化に取り組む。

 同日の事業会社戦略説明会でパナソニックエナジーが明らかにした。主力の米国でEV市場の成長率が鈍化していることから、2027年度までの電池事業への大規模投資を継続しつつ、戦略を一部修正する。

 日本の車載電池事業を強化する。住之江工場を日系自動車メーカー向けの供給拠点に位置づけ、従業員を増やすとともに原価改善を進めて収益性を強化する。和歌山工場(和歌山県紀の川市)では、高容量の新型電池「4680」の量産技術を早期に確立して事業の拡大を図る。

 国内車載電池事業の中長期戦略として、日系自動車メーカーとの連携を強化して新たな受注を狙うとともに、北米の主力製品「2170」電池も生産する。また、28年度には22年度と比べてギガワット時当たりの人員を35%以上減らし、効率的な生産体制を整える。

 北米の電池事業は今後も投資を継続する。ネバダ工場の生産能力を30年度までに23年度比で15%引き上げたり、建設中のカンザス工場でギガワット時当たりの人員をネバダ工場と比べて30%以上減らす省人化投資を通じ、競争力の高い電池を量産する。

 パナソニックエナジーの車載電池事業は、世界最大のEV市場である中国ではなく、テスラ向けが中心の米国が主力だ。しかし、米国のEV市場の成長率が鈍化し、自動車各社が北米でのEV投入計画を遅らせるなど、市場環境が変化している。このため、日本事業にも改めて力を入れることにした。

 パナソニックエナジーはまた、23年度に9200億円だった売上高を30年度に3兆円を目指す目標も撤回した。事業売上高3兆円超の目標は継続するものの、時期については未定とした。28年度以降の投資計画についても市場動向に合わせ、柔軟に対応していく。