運送と運送以外の業務を切り分け、荷主から対価を収受するよう求める

 国土交通省は、貨物自動車運送事業法に基づくトラック運送業の「標準的運賃」を見直し、運賃水準の平均8%引き上げや荷役の対価などを加算した新たな運賃を告示・施行した。荷主などに燃料費高騰などを踏まえた適正な価格転嫁や多重下請構造の是正などを求め、ドライバーの賃上げ原資の確保などにつなげる。同日付で告示した新たな「標準運送約款」は6月1日から施行する。

 標準的運賃は、トラック事業者が自社の適正な運賃を算出し、荷主との運賃交渉を行う際の参考指標。国交省は今回の見直しで、運賃表を改定し、運賃水準の引き上げ幅を平均約8%とした。

 運賃表の算定根拠となる原価のうちの燃料費は、直近の燃料価格を参照して1㍑当たり120円に変更した。燃料サーチャージも同120円を基準価格に設定した。

 荷待ち・荷役などの対価についても標準的な水準を示した。現行の待機時間料に加え、荷役作業ごとの「積み込み料・取り卸し料」を加算する。荷待ち・荷役の時間が合計2時間を超えた場合は「割増率5割」を加算する。

 多重下請構造の是正に向けて、運賃の10%を別に収受する「下請け手数料」を設けた。多様な料金・運賃設定として、共同輸配送などを念頭に貨物1個ずつに運賃を算定する「個建運賃」も設定した。

 リードタイムが短い運送をする際の「速達割増」や、有料道路を利用しないことによる運転の長時間化を考慮した割増も設定する。

 標準運送約款では、運送と運送以外の業務を別とし、荷主から対価を収受することを明記する。荷主と運送事業者にそれぞれ運賃・料金などを記載した電子書面(運送申込書/引受書)の交付を求める。

 「物流の2024年問題」も踏まえ、国交省は、昨年6月にまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」をもとに、関係省庁や産業界と連携しながら、ドライバーの待遇改善や賃上げの原資となる適正運賃を収受できる環境の整備に取り組む。