業界側も適正な工賃単価を示す必要がある

 保険修理の工賃算出に用いる「指数対応単価」の2024年度分を引き上げる方向で損害保険大手4社が検討していることが分かった。金融庁の要請に基づき、単価の算出に用いる経済指標を消費者物価指数(CPI)以外にも広げる。正式に決まれば昨年度に続いて2年連続の引き上げとなる。

 損保大手4社は、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。具体的にどのくらいの上げ幅、金額になるかは各社とも検討中という。基本的に取引する全工場が対象になる。

 指数対応単価は、損保各社が出資する「自研センター」が作成した事故車修理に関する作業時間を示す「指数」にかけ合わせる1時間当たりの単価のこと。自動車整備事業者と損保会社との話し合いで決まる。損保側はCPIの変動を単価改定の主な参考にしており「本来は企業物価指数に応じて改定すべき」(日本自動車車体整備協同組合連合会=日車協連)と主張する車体整備業界側と溝があった。

 東京海上日動は「単なるCPIの推移のみならず、エネルギーなどの個別品目に関するCPI推移や、人件費などにも着目して対応してきた経緯があり、24年度方針にあたっても同様に検討している」という。損保ジャパンは「CPIの推移をベースとしながら、物価や賃金の上昇などの経済情勢も踏まえ、引き上げ幅を検討している」とコメントした。あいおいニッセイ同和損保も「従来はCPIのみを参考としていたが、その他の指標も総合的に参考としながら検討している」という。

 こうした損保各社の対応には、単価の改定に際し、CPIにこだわることなく人件費なども考慮するよう金融庁が損保大手に事実上、求めたことがある。日車協連は「本来は損保側に立つ金融庁が車体整備業界を後押ししてくれてこんなに心強いことはない。期待感はある」とした上で「やみくもに引き上げるという話ではないが(車体整備事業者は)決算書などからしっかりと計算して適正な工賃単価を提示し、損保との交渉を進めてほしい」とコメントした。

 指数対応単価は2023年3月の参議院予算委員会でも取り上げられた。金融庁は業界へのアンケート調査を通じて実態を把握。「23年度は一定の引き上げが認められたが、車体整備事業者と損保の間には工賃単価の水準や算出方法などに見解の相違もみられた」と指摘した。