資材費やエネルギーコスト、人件費などの上昇に見合った対応を損保側に求める

 日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連、小倉龍一会長)は10月をめどに、大手損害保険各社に団体協約の締結に向けた交渉を申し入れることを明らかにした。修理費の算出に使う「指数対応単価」について、2022年度実績から15%以上の引き上げを求める方針だ。損保各社は23年4月に消費者物価指数を参考に同単価を2%程度、引き上げた。しかし、資材費や人件費、エネルギー費などの上昇分を吸収できる水準とはほど遠いという。このため、日車協連は団体交渉を通じ、物価上昇などに見合った対応を損保側に求めていく考えだ。保険金を水増し請求していたビッグモーター問題で保険修理をめぐる世間の目が厳しさを増すなか、交渉の行方が注目される。

 日車協連は、6月の総会で損保会社との団体協約の締結に向けた交渉に入る方針を決めた。まず、あいおいニッセイ同和損害保険と三井住友海上火災保険、損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険の4社を対象とする。状況に応じ、大手4社以外にも交渉を申し入れる。

 損保会社が車体整備事業者を紹介・あっせんする「指定工場取引」を除く、自動車保険が適用された板金塗装(BP)作業の見積もり算出に用いる指数対応単価を交渉する。この単価は、損保が保険金の支払いに用いる指数(標準作業時間)にかけ合わせる1時間当たりの単価で、本来は損保と車体整備事業者が個別に話し合って決める。団体協約を締結した場合でも、経営規模など自社の実態に応じた個別交渉を引き続き組合員に推奨していく。

 指数対応単価の引き上げ率として求める「15%以上」は、企業物価指数の前年比上昇率と、春季労使交渉の平均賃上げ率をベースに、原材料やエネルギー価格の上昇率を転嫁できる水準として算出した。22年の企業物価指数(20年平均=100、速報値、日本銀行)は前年比の上昇率9・7%、23年春闘の平均賃上げ率は3・58%だった。損保各社が改定の参考にする消費者物価指数を用いた水準では、人件費や自動車技術の高度化に応じた設備投資を賄うことが難しいと判断した。

 今回の交渉に際しては、公正取引委員会による「事業者等の活動に係る事前相談制度」も活用する。企業・団体の行為が、独占禁止法などの法令に抵触するかどうかを公取委が指南するものだ。日車協連では、9月中にも回答が出ることを想定し、交渉の準備に入る。