「丁寧な話し合い」も同時に求めた

 金融庁は、車体整備事業者と話し合って決める1時間当たりの工賃単価の改定交渉に用いる参考指標に柔軟性を持たせるよう損害保険会社に求めた。損保が主な指標とする消費者物価指数(CPI)だけではなく、実態に合わせ、より多くの経済指標を参考とするよう求めた格好で、工賃単価の上昇につながる公算が大きい。工賃単価をめぐっては、企業物価指数を併用したり、人件費を考慮したりするよう求める声が従来から車体整備業界から出ていた。

 金融庁は、損保各社への要請に先立ち、23年度以降の工賃単価の協定について車体整備事業者を調査した。

 調査対象となった日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連、小倉龍一会長)に加盟する各単組の組合員3151事業者の回答によると、23年度以降の工賃単価が前年度よりも「引き上げられた」としたのは約8割弱に上った。実際の引き上げ額は20・1%の「変更なし」を除くと、24・2%の「300円以上」が最多。次いで「100円以上~150円未満」(17・0%)と続いた。引き上げ率でみると、22年の消費者物価指数(総合指数、前年比2・5%)以上の伸びだったとする回答が約4割あった一方で、2・5%未満との回答も5割超あった。

 改定後の水準の妥当性を聞いたところ「納得していない」との回答が約7割を占めた。人件費や材料資材、光熱費などの上昇に見合った引き上げ額になっていないためで、工賃単価のさらなる引き上げを求める意見が多かった。

 こうした調査結果に対して、金融庁は「23年度の工賃単価は一定の引き上げが認められたものの、車体整備事業者と損保の間には工賃単価の水準や算出方法などに見解の相違もみられた」と指摘している。このため、工賃単価の改定に当たっては、他の指標の検討とともに、丁寧な説明による話し合いで決定するように損保各社に要請した。

 損保と車体整備事業者が協定を結ぶ工賃単価をめぐっては、日車協連が大手損保との団体交渉の準備を進めている。日車協連側は、物価の高騰や人手不足の深刻化などを背景に、少なくとも22年度比で15%以上の引き上げを求める方針だ。