SOMPOグループの最高実力者である櫻田謙悟会長の監督責任が焦点になっていたが…

ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)問題で、同社と親密な関係にあった損害保険ジャパンの対応を調べていた親会社SOMPOホールディングス(HD)の社外調査委員会の最終報告書が1月16日、同社のホームページで公表された。焦点となっていたHDの監督責任については「主体的な情報収集も行わず、受け身の姿勢に終始しており、主体的・指導的姿勢が乏しく、リスク感度は損保ジャパンと同様に低かった」と指摘した。また「HDと損保ジャパンの間に十分かつ良好なコミュ二ケーションがとられていたとは到底認めがたい」とした。

最終報告書によると、まず2022年8月29日にビッグモーターの不正が報じられた。これを受けて損保ジャパンからはじめてHDにメールで報告があがった。同31日にHDのグループCEOの櫻田謙悟会長らに説明があったが、内容は正確なものではなかった。「ビッグモーターの組織的関与は認められず、人為的ミスに基づくもので、すでに対策はとってある」というもので、損保ジャパンの対応の正当性を説明するだけのものだった。そのためHDは危機的な事案であると認識することはできなかった、とした。

ビッグモーター幹部の指示によって同社の自主調査の内容が改ざんされていたことなどのマイナス情報は、HDには上げていなかった。

損保ジャパンはグループの中核会社でHDを当てにせずに自己完結を図ろうという志向が強く、HDとしても損保ジャパンの実力を過信し遠慮したことでリスクマネジメントも甘くなりがちであった、とも指摘した。

今回の報告書では、HDやグループの最高実力者である櫻田謙悟会長の監督責任が焦点となっていた。

櫻田会長は2023年9月8日の会見で、「この問題もビッグモーターが弊社の大きな代理店ということも報道で初めて知った」と強調した。その上で「責任はあるが、責任の取り方は社外調査委員会の報告の結果を待って判断する」と述べていた。会見では、櫻田会長の責任についての質問が相次いだ。

今回の問題では、ビッグモーターへの入庫紹介を損保大手3社が中止していた中で、不正を把握していたのにもかかわらず損保ジャパンだけが入庫紹介を再開した経緯がある。取締役会にも諮らなかった。この経営判断の責任をとって白川儀一社長が9月の会見で辞任を表明した。

10月10日にHDが公表した社外調査委員会の中間報告書では、損保ジャパンが不正を把握していたのに入庫紹介再開の直前に金融庁に「不正を認定できなかった」と報告していた。この件について「隠蔽(いんぺい)と言われてもやむを得ない」と指摘されている。

白川社長は22年4月に社長に就任したばかりで、ほかの経営陣も(ビッグモーターとの取り引きを失ったら)大幅に売り上げを落としてしまうため、どうしても避けたいという気持ちがあったという。ビッグモーターの悪い情報についても現場は把握していたが、社長を含めて十分に共有されていなかった。

また、ビッグモーターの修理見積額を原則そのまま受け入れる「簡易調査」を導入していたことに加えて、その事後チェックも「簡略化」されていたため、ビッグモーターの工場に問題があっても事実上野放しになっていた。入庫紹介数によって自動車損害賠償責任(自賠責)を割り振られるシステムになっていて同業他社と競争させられていたことも背景にあった。

(小山田 研慈)