ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都港区)の自動車保険の不正請求問題で、損害保険ジャパンの白川儀一社長が9月8日、都内の本社で会見し、辞任を表明した。ビッグモーターの不正を把握していながら、停止していた取り引きの再開を社長自らが促していたことなどの責任をとった。親会社のSOMPOホールディングスの櫻田謙悟会長は自身の経営責任については「社外調査委員会の調査次第」と述べ、現時点での辞任は否定した。
SOMPOホールディングスの石川耕治グループCERO執行役常務が8日付で損保ジャパンの代表取締役副社長執行役員に就任した。次期社長については今後指名委員会で検討していく。白川社長の辞任日については未定。
白川社長は会見の冒頭「関係者のみなさまにご心配、ご迷惑をおかけした。心よりお詫び申し上げる」と陳謝した。
ビッグモーターの不正を認識しながら、2022年7月に損保ジャパンだけがビッグモーターの取り引きを再開した経緯について白川社長が説明した。7月6日の会議で「(ビッグモーターが)クロに近いと推測される」と会議で発言したことを認めた。その上で「そのような不正はあくまで限定的、局所的な不正であって広域的、組織的にやっているとは思わなかった。それで7月25日からの取引再開を決めたが、私の大きな判断ミスだった」と語った。
ビッグモーターの保険取引約200億円のうち、損保ジャパンは120億円と6割のシェアを占める。ビッグモーターとの関係が悪化することで「売り上げが減ることを心配したのは事実」(白川社長)という。
会見では、親会社のSOMPOホールディングスの櫻田会長の経営責任についても質問が相次いだ。櫻田会長が初めてこの件の報告を受けたのは、ビッグモーターとの取り引き再開後の22年8月31日だったという。一部報道で、不正の可能性などを知って報告を受けたという。
櫻田会長自身の辞任の可能性については「わからない。調査委員会の報告書をみてみないと」とした。「やるべきことは辞任ではないと思っている。やることは他にあると思う」と語った。
ビッグモーターからの報告の中で、一部文書の改ざんがあったという報道について、誰が改ざんしたかなどの質問には「社外調査委員会が調べており、きょうの時点では説明できない」とした。出向者37人の役割についても、基本的には不正はなかったという認識を示しながらも社外調査委員会が調べている部分があり、現時点では説明できない、とした。
このタイミングでの会見について櫻田会長は「白川社長から、『自分の責任であり(辞任しないと)もう持たない』と申し出があり、急に会見することになった」という。
SOMPOホールディングスでは、8月7日付で社外弁護士による調査委員会を設置した。調査を終えるまでまだしばらく時間がかかるという。今後も「中間報告」、「最終確定版」がまとまるたびに会見の場を設ける、とした。