子どもの命を守るには装置の適切な運用が欠かせない

 送迎バスへの幼児置き去り防止装置の装着義務化の経過期間終了まで残り3カ月に迫る中、都道府県ごとに装備状況に差が生じている。こども家庭庁が公表した装備状況の調査結果によると、12月末時点で装着をほぼ終える自治体がある一方、70%台にとどまる見通しの県もある。それでも、期限となる2024年3月末時点での装着率は、同庁が把握する5万4345台のうち、99・9%となる見込み。今後、追い込みがかかるとみられる中で、遅れが目立つ自治体がどのように巻き返していくかが焦点となりそうだ。

 同庁が19日に公表した調査結果によると、12月末時点で装備率が8割に届かない見通しの自治体は宮城県(74・1%)、群馬県(76・5%)、大分県(77・1%)、三重県(77・2%)、広島県(78・4%)、和歌山県(78・9%)、千葉県(79・3%)、愛知県(79・6%)の8県。同庁では、「障害を持つ子どもが通う施設での装備の遅れを挙げる自治体が目立つ」という。置き去り防止装置は仕様によって異なるが、車内の確認を促す際や、万が一車内に子どもが取り残されていることが検知された場合に、警報音が鳴る。「この音に対して、子どもによっては敏感に反応する」(同庁の担当者)ため、装置の選定に苦慮するケースが多いとみられる。

 また、身体に障害を持つ子どもを車いすのままワンボックスカーで送迎している施設では、車いすの乗せ降ろしが必須の作業になるため、装置の必要性に疑問を持つところもあるようだ。こうした施設からは「装備に後ろ向き」(広島県)な声が聞かれるという。また、事業者別にみると、学校帰りの障害者を預かる放課後等デイサービスに遅れが目立つが、「こうした施設が占める割合が大きい」(三重県)という事情もあるようだ。

 一方、装備率がすでに高くなっている自治体では、独自の取り組みを行ったことが、結果につながっている。12月末時点で99・7%の装備率を見込む山口県では、静岡県で22年9月に発生した車内置き去り事故後、幼稚園や保育施設などを対象に幼児の置き去りを防ぐための説明会を実施。さらに山口県では「監査時に装備状況の確認」や「国の要請に応じた県内の装備状況を公開した」ことが奏功した。

 また、滋賀県(89・4%)は、研修会の開催や実地指導の徹底に加えて、「補助金の支給に当たって、(前もって事業者に支払う)概算払いに対応した」という。同県は前回調査時(6月末)に20・3%と、他の自治体と比べて出遅れていた。「調査結果を踏まえて周知などを徹底した」ことで、大幅に進ちょくした格好だ。

 ただ、装置を備えても、適切に運用しなければ想定外の事故が発生する可能性も否定できない。幼い命が危険にさらされるリスクを下げるためには、対象車両のほぼすべてに装備が完了する23年度末以降も、正しい運用方法について啓発し続けることが重要になりそうだ。

(後藤 弘毅)