アイオニック5N
愛知県で行ったNトラックデイ

 ヒョンデは高性能ブランド「N」として初の電気自動車(EV)「アイオニック5N」で、日本のスポーツカー市場に攻勢をかける。同モデルは2024年上半期に国内発売する計画で、輸入車としては珍しく最終仕様の調整を日本法人が手掛けている。大都市を中心にNブランドを訴求するショールームの開設も視野に入れるなど、国内ユーザーの開拓に力を入れる。サーキット走行をこなせる高い走行性能と、日本に適したスペックを両立することで、国内市場の潜在的なEVスポーツカー需要を掘り起こす。

 輸入車勢の高性能車は、それぞれのメーカーの本国などが車両開発を担っており、スペックも基本的に世界共通となるケースが多い。ただ、今回、ヒョンデは、アイオニック5Nの日本仕様車は異なるアプローチで詰めの開発を進めている。実際には日本法人のヒョンデモビリティジャパン(趙源祥社長、横浜市西区)の傘下、ヒョンデモビリティジャパンR&Dセンターで最終的な調整を担当する体制を敷く。

 ここでは、アイオニック5Nを路面状況が整った道路環境に適合させるだけではなく、「首都高速や箱根の峠道、筑波サーキット、富士スピードウェイなど、スポーツカーのオーナーが走るであろう環境下でテストを行っている」(宮野達也車両開発支援チームシニアリサーチャー)という。さまざまなテストを積み重ねながら、最終的な日本仕様を固めている。

 国内での最初のテスト走行は6月に実施した。駆動用モーターの音を強調し、エンジン音や排気音を疑似的に発生させる「Nアクティブサウンド+」や電子制御サスペンション「ECS」、ドリフトアングルを維持する「Nドリフトオプティマイザー」などに、日本独自の改良を施した。10月にもテストを行っているが、サスペンションの仕様に関しては「発売直前までチューニングを行う」(同)というほどの力の入れようだ。

 また、国内でNブランドの訴求にも力を入れる。ヒョンデは11月16~19日に、愛知県と岐阜県で開かれた世界ラリー選手権(WRC)の最終戦「ラリージャパン」に合わせ、報道関係者向けの試乗会「Nトラックデイ」を実施。アイオニック5Nのテスト車両を公開したほか、市販に必要な法令対応をなくして走行性能を高めた「アイオニック5Nドリフトスペック」の試乗機会も提供した。SNS(会員制交流サイト)や動画配信サービスも含めたメディア戦略を強化し、国内ユーザーに幅広く情報発信することで、認知向上に努めていく。

 また、Nブランドは高性能車という特性上、ユーザーに通常のEVと比べて細かな技術や機能などを説明していく必要がある。加えて、ブランドの世界観などを伝えていくこともイメージアップには欠かせない。こうした場として役立てるため、高性能車の需要が多い大都市などに、車両を確認しながら、説明を受けられるショールームも設けていきたい考えだ。

(水町 友洋)