ナノレベルの構造制御技術で強度を高めた

 東レは30日、従来製品と比べて引っ張り強度を10%以上高めた「超高強度炭素繊維」を開発したと発表した。同社によると強度は世界最高水準という。自動車などの軽量化につながるほか、これまでは難しかった形状にも加工できる利点がある。愛媛事業所(愛媛県松前町)の既存設備で3年以内の量産開始をにらむ。東レは独自性を強みに新炭素繊維の需要を開拓し、将来的には売上高で数百億円水準を目指す。

 開発した「トレカ T1200」は、同社の最高強度品種「トレカ T1100」の引っ張り強度7㌐ パスカル (ギガは10億)から、8㌐ パスカル へと高めた。同社は㌨(10億分の1)㍍レベルでの構造制御技術を得意とし、新素材は炭素繊維1本あたりの表面を平滑化させたり、異物の存在を抑えたりし、破壊が起こりにくい内部構造を実現した。

 引っ張り強度で5㌐ パスカル 級の炭素繊維は国内外のメーカーが製品化しているが、8㌐ パスカル 級は世界最高水準だ。より少ない使用量で必要な強度を得られるため、自動車や航空機などを一段と軽くでき、燃費向上などに寄与する。

 炭素繊維の生産拠点である愛媛事業所の既存設備で製造でき、すでにサンプル品の提供を始めた。今後は、需要に応じて国内外の拠点で生産することを視野に入れる。

 軽量・高強度の炭素繊維は鉄の代替素材として航空機を中心に活用が進む一方、自動車向けではコスト面などからスポーツカーや高級車など一部での採用にとどまっている。コストにもよるが、今回の新素材は、従来は難しかった形状への加工も可能なため、より広範囲な部品で炭素繊維への置換が進む可能性もある。自動車ではモータースポーツ分野を含め、新素材を積極的に売り込む考えだ。