独ヴィテスコ・テクノロジーズは、2030年頃の市場投入を目指す第5世代「eアクスル」で、コストを現行品である第3世代に比べて約半分に下げ、出力密度を約2倍に高める開発目標を明らかにした。炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といった次世代パワー半導体の搭載も急ぐ。磁石やアルミのサプライチェーン(供給網)も強化する。同社は、電気自動車(EV)市場が30年に22年の5倍超に成長すると見込む。開発、供給の両面で対応を進め、eアクスルのシェア拡大を目指す。
ヴィテスコは独コンチネンタルのパワートレイン部門がスピンアウトした企業で、EV製品や内燃機関車の電子制御ユニット(ECU)などを手がける。22年の売上高は90億 ユーロ (約1兆4千億円)超で、総受注額の7割以上にあたる104億 ユーロ (約1兆6千万円)をすでに電動車関連製品が占める。同社のエレクトリフィケーションソリューションズ(電動化製品)事業部の開発責任者を務めるガード・ロゼル氏がこのほど来日し、開発目標などを明らかにした。
同社は、24年に第4世代eアクスル「EMR4」の量産を始める。第3世代より小型・軽量化したほか、1基で80(約109馬力)~230㌔㍗(約313馬力)まで対応し、汎用性とコスト低減を両立させた。レアアース(希土類)レスの巻線界磁形同期モーター(EESM)と、永久磁石式モーターの双方に対応する。
開発中の第5世代製品は、第3世代と比べてコストと出力損失、地球温暖化係数(GWP)を半減させ、出力密度を約2倍とすることを目指す。コスト目標は、生産量の増加に加え、原材料費や物流費も見直して達成を目指す。出力密度はインバーター性能の大幅な向上を想定する。
EVの駆動に用いる電圧は今後、主流の出力400㌾から800㌾へと高出力化する見込みで、より高電圧に耐え、変換効率にも優れるSiC搭載インバーターの需要拡大が見込まれる。同社もロームやオンセミと供給契約を結び、25年頃からSiC搭載インバーターの投入を本格化していく。また、インフィニオンとはGaN半導体の供給で提携しており、次世代のGaN搭載インバーターの30年以降の投入を視野に入れる。磁石やアルミなどでも原料メーカーなどとの提携を広げ、サプライチェーンを強化していく。
ロゼル氏は第5世代製品について「どのような技術を搭載するかは評価中だ」としながらも「最終的にはコスト削減につなげる必要がある」と語った。性能に加え、コスト面でも競合優位性を持つことで、eアクスルのシェアを拡大する考えだ。