防災士の資格も持つタレントの松本秀樹さん
避難先でもプライベートな空間を確保できるキャンピングカー
災害時の便利さをセールスポイントにしているクルマもある

 2023年は関東大震災から100年で、さまざまな観点から防災が語られている。一つのテーマが、災害時のペットとの避難だ。ドッグトレーナーで防災士の資格を持つタレントの松本秀樹さんは、ペットと避難できるキャンピングカーを推奨している。避難所などで「他人とのトラブルを避けられるほか、必要な荷物も運べる」とアドバイスする。これから自動車を買おうというペット愛好家にとって、選択肢の一つになりそうだ。

 高齢化やコロナ禍を経て、ペットを飼う家庭が増えている。飼い主にとっては家族同然だ。東日本大震災では置き去りにされたペットもいて、環境省は飼い主の自己責任の下でペットを連れて避難する「同行避難」を推奨している。ただ、「ルール」のようなものはないのが実情だ。

 災害時にペットとともに避難所に身を寄せる場合、問題となるのは①人をかむ②吠える③排泄物のにおい―の3点だ。多くの人とスペースを共有する避難所では、トラブルの原因になりかねない。

 一方、キャンピングカーは「個室」であり、ペットと他の人との接点を減らせる。電源も確保できるほか、人やペットの食料や水も容易に運べて保管もしやすい。ペットにとっても、車の中は飼い主のにおいもあるため、安心できる環境という。

 こうした特徴から、松本さんは、ペットを飼っている人にファーストカ―(最初に買う車)としてキャンピングカーを勧めている。特に、「最近のモデルは、電源や装備なども相当充実している」と評価しており、「小型のものもあるし改造もできる」と、ペットとの避難におけるキャンピングカーの有用性を指摘する。さらに、「車で避難するとエコノミー症候群になるので、災害避難はダメ、というイメージが定着しているが、それを払拭(ふっしょく)したい」としている。

 さまざまな自然災害の中でも、「台風時は数日前から分かるので、キャンピングカーの避難に適している」という。また、「最近の若者はクルマに興味がないというが、防災力アップという観点からクルマを考えてもいいのでは」とも訴える。

 日本RV協会(JRVA、荒木賢治会長)がまとめた「キャンピングカー白書2023」によると、ユーザーのほとんどが災害時にキャンピングカーが役立つとみている。JRVAが認定する「RVパーク」などのオートキャンプ場が、いざというときに防災拠点として有効だと考えているユーザーが多いことも明らかになった。

 松本さんは9月2日に東京都港区で行われた防災イベント(協力=あいおいニッセイ同和損害保険)で、ペットとの避難について講演した。用意しておくものとしてバリケンネル(犬を持ち運びできるケース)、狂犬病予防注射接種済証、においがもれないビニール袋などを挙げた。また、ペットとはぐれた時のために、マイクロチップを埋め込むことやペットと家族で映った写真も携帯したほうがいいとも指摘した。

(小山田 研慈)