生成AIで開発効率を大幅に高める(1月のCES2023で公開したアフィーラのプロトタイプ)

 ホンダとソニーグループの電気自動車(EV)事業を手がける両社の合弁会社、ソニー・ホンダモビリティ(SHM)は、2025年に「アフィーラ」ブランドで発売する予定のEVの開発に生成AI(人工知能)を活用する検討に入った。ソニーグループとの連携も視野に、生成AIの基盤技術である「大規模言語モデル(LLM)」を主に自動運転や先進運転支援システム(ADAS)分野に用いて開発効率や完成度を高める。メルセデス・ベンツやトヨタ自動車も製品や開発に生成AIを採用しており、急速に進化するAIの活用が自動車業界でも広がりつつある。

 SHMが25年前半に北米で先行受注して発売、26年春に北米市場から納車する予定のEVは、高い安全性能を確保するため、先進的な自動運転・ADAS機能を搭載する予定。これを実現するための自動運転システムの開発などにLLMを活用できないか検証を始めている。

 LLMを活用することで、目まぐるしく変化する車両周囲の状況に関する大量のデータを処理し、挙動を予測するとともに、高度な安全性を実現する制御システムを短期間で開発することを目指す。

 歩行者や自転車、周囲の車両などが混在する一般道などの交通環境下で自動運転やADAS機能を高めるには、センサーやカメラ、通信インフラなどを経由して集まる大量のデータを適切に処理する必要がある。自動運転システムの機械学習にLLMを活用すれば、制御ソフトの開発効率が高まる可能性がある。同社はEVメーカーとしては後発だが、完成度の高いEVの開発サイクルを縮めることができれば投下資金の回収など事業面でも優位性が高まる。

 生成AIは他メーカーでも活用が進む。独メルセデス・ベンツは、オープンAIの「チャットGPT」を音声アシスタントに活用し、乗員と車載システムが自然な対話を交わす技術を実用化する方針。トヨタは、初期の設計スケッチにエンジニアリングパラメーター(制御因子)を確実に組み込むための生成AI技術を開発した。

 利用者の指示に基づき、画像やプログラムを自動作成する生成AIは企業や自治体、個人などさまざまな領域で活用が進む。自動車業界でも、開発期間の短縮やさまざまな領域の機能を高めるため、生成AIを活用する動きが広がりそうだ。