車の進化や法制度への対応など、自動車の整備業界が抱える課題は山積している。6月にアルティアの社長に就任した浜本雅夫氏は、自動車整備機器を扱う商社の立場から「顧客満足(CS)、従業員満足(ES)、コンプライアンス(法令順守)をすべて成立させた上で、生産性を高める手伝いをする」と力を込める。それにより、「アルティア」のブランドの向上にもつなげていく考えだ。

 ―社長に就任して感じていることは

 「社長になる前を含め、4カ月ほど皆と一緒に仕事をしているが、専門性が高い〝プロフェッショナル〟がそろっている。個々の力によって組織力を発揮している。好事例やベンチマークを共有することで、個々のプロとしての技術力や提案力などを組織として高められないかと考えている。当社のブランドスローガンである『創造する信頼のパートナー』を社員と一緒に具現化するのが楽しみだ」

 ―6月のオートサービスショーを振り返って

 「4年ぶりの開催ということで、お客さまが多かったように感じた。自動車業界が100年に1度の変革期と言われる中、各社が工夫をして展示や訴求していたし、お客さまが熱心に情報を取りに来ている。われわれは今回、電気自動車(EV)を積極的にアピールした。EVについては入庫が少ないため、まだ自分の心配事として捉えている事業者は多くない。普及が進んだときに、アルティアのことを思い出してくれればいい」

 ―検査用スキャンツール(外部故障診断機)の投入時期は

 「販売開始は9月末から10月初旬を予定している。検査に特化したものと、整備用スキャンツールとセットになったもののラインアップを予定している。(基本ソフトウエアが)『ウィンドウズ』のタブレット端末が一つのパッケージになって入っていることが強みだ」

 ―整備機器の販売についてどう見ているか

 「整備士の確保が難しくなっている中で、今いるスタッフに定着してもらうことも大事だ。コンプライアンス、生産性、ES向上といった課題をクリアするため、整備機器の入れ替えを判断する経営者が少なくない。この流れは今年だけではなく、その先もしばらく続くと思う。整備機器の入れ替えに対するニーズはまだまだある」

 ―原材料費や光熱費等が上昇しているが影響は

 「原材料費の高騰や半導体などの部品が入ってこないことで、タイムリーに製品を納めるために苦労している。価格については納得できる形で改定した上で取り引きしている。CS、ES、コンプライアンス、生産性を考えると、金額が上がっても、それだけのニーズに応えられる整備機器を導入し、お客さまの満足と社員の定着に投資していく経営判断はあると思う。世の中全体が値上げの動きになっているので、そこへの理解はある程度いただけていると思う」

 ―車が変わり整備も変わっている。その変化をどう捉えているか

 「車は高機能化しており、特に専業者は全方位で対応しなければならない。そこへの投資を考えると大変だと思う。また、高機能になればなるほど、その機能をきちんと作動、維持させる行為がなければ、意味がない。きちんとした設備で、知識・技術を持ったメカニックが高機能な車両をどうメンテナンスしていくかが問われていく」

 

〈プロフィル〉はまもと・まさお 1985年日産自動車入社。営業本部東北カンパニー長などを担当。2017年日産プリンス東京社長、21年7月日産東京取締役専務執行役員、23年4月アルティア専務執行役員などを経て同年6月から現職。慶応義塾大学法学部卒、1962年7月生まれ、61歳。神奈川県出身

(小野 大佐)

◆月刊「整備戦略」2023年9月号の巻頭インタビュー「フロントフェイス」で、全文を掲載します。