会期中は整備事業者それぞれの「困りごと」を解決したい来場者が多く訪れた

 6月に開かれた「第37回オートサービスショー2023」。開催自体が4年ぶりだったことに加えて、車載技術の進化や電動化など、車も前回から大幅に進化した。特定整備制度や2024年10月のOBD(車載式故障診断装置)検査など、整備業界を根本から変える法令の改正も業界の変化を加速させる。会場にはそれらに対応する整備機器やサービス、システムなどが一堂に会し、来場者にさまざまな変化に対応するためのヒントを示した。

 今回のショーの主役の一つが、OBD検査に対応する検査用スキャンツールだ。開催までに型式認定を受けたのは2社2機種のため、ほとんどの出展社が参考出品といった形で披露した。それでも展示された製品には「想像していた以上の人が来た」(スキャンツールメーカー担当者)ほど活況だった。別のスキャンツールメーカーの担当者によると、来場者からは「どの機器が(OBD検査に)対応しているのか」「(検査用を)新しく買い直さなければいけないのか」といった質問が相次いだという。

 OBD検査が始まる前のオートサービスショーは今回が最後。来場者にとっては、各社の製品をまとめてみる貴重な機会となった。すでにスキャンツールを所有する整備事業者の中には、現在所有している機器との兼ね合いを気にする人もみられた。

 先進運転支援システム(ADAS)の整備に必要なエーミング(機能調整)は、実施前にターゲットの位置を測定、設置する作業が大きな手間になっている。これを容易に行えるサポートツールも目立った。さらに、整備機器の中でも測定・計測機器はコンピューターとの連携がさらに進み、計測自体が簡単に行える製品が増えている。こうした整備士の負担を軽減できるツールの活用で、作業時間の短縮につながる提案を行った。

 整備工場には欠かせないリフトは、内燃機関車に比べて重量がかさむ電気自動車(EV)の作業を見越して荷重能力を引き上げたり、EVの構造を踏まえてジャッキアップしやすくした製品の出展が相次いだ。足回り整備機器も、EVのタイヤに対応するタイヤチェンジャーなどが展示された。

 大型車向けの整備機器は、作業を行う整備士の負担を軽減することに主眼が置かれた製品が多かった。例えばタイヤの脱着を行うホイールドーリーは、立ったまま作業を行えるため腰への負担を減らせる。ある出展社の幹部は今後、「作業負担を軽減する機器が主流になる」とみている。

 車体整備関連では溶接機や塗装関連で、新たな提案が行われていた。ある塗料メーカーでは環境負荷を減らせる水性塗料の主力商品などをアピールしていた。

 洗車関連は最新の洗車機の展示に加え、料金をクレジットカードや交通系ICカードなどで支払える機器が登場した。これまでは現金やプリペイドカードが中心で「他業界に比べて遅れていた」(洗車機メーカー)ことから、キャッシュレス化を推進する。また、現金を財布から取り出す手間を省けることで、利用者が洗車の追加メニューを購入するハードルが下がることを期待している。

 会期中は整備事業者やディーラー関係者、自動車整備士を目指す学生らでにぎわった。ある出展社は「困りごとを解決したい」という来場者が多く訪れていたという。別のブースでは自社の課題や業界の変化に対応しようとする来場者が多く、「中身が濃い展示会だった」と振り返った。

◆月刊「整備戦略」2023年8月号で特集「業界の大変革に対応する―第37回オートサービスショー2023―」を掲載します